【インタビュー】Job master VOL.18 僧侶 山口純雄(39)

さまざまな職業で活躍する人に迫るJob master。第18回目は、“お坊さん”と呼ばれる僧侶。埼玉県川口市にある、真言宗 智山派の寺院『密蔵院』の僧侶、山口さんに迫ります。

―お仕事の内容を教えてください。
まず毎朝、御本尊様にお経をあげる“おつとめ”をして、お寺を守るということが基本にあります。さらに、密蔵院にお墓を置いていただいている檀家さんの葬儀や法事での読経が不定期で入ってきます。あとこれは真言宗の特色でもあるのですが、皆さんの願いをお護摩の火で浄化して仏さまに伝える“不動護摩”なども大切な仕事の一つです。また、お寺は公共施設的な側面もあるので、地域貢献活動なども行っています。

―密蔵院の僧侶になるまでの経緯は?
もともと生まれた家がお寺だったというのと、兄弟の上2人が姉で僕が末っ子の長男ということもあって、生まれた時から密蔵院の跡取り息子として育てられました。小学生の頃からお盆には頭を坊主にして、父親である住職と檀家さんのところを周ったりもしていましたね。僧侶になるには総本山で1年間修行をするか、宗派が定めた大学で勉強をするという2通りがあるのですが、僕は両方やりました。それにはキッカケとして大きな出来事があるんですけど、17歳の時に病で父親が倒れて2週間ほど入院したことがあって……。僕の目の前で倒れたということもあって、「明日から密蔵院をどうしたらいいのだろう」という不安が一気に襲いかかってきたんですよね。大学に行けば4年間で僧侶の資格を取ることができるのですが、4年もかかるんだったら総本山で修行して1年で資格を取ってしまおうと思ったんです。そこからは、高校を卒業してすぐに大学を休学して、総本山で1年間修業をして僧侶になりました。

―総本山ではどのような修業をされるのですか?
皆さんがよくイメージされる通りの修業だと思います(笑)。朝3時に起きて朝のおつとめをして片付け、朝ご飯を食べて大々的な掃除をします。その後は僧侶になるための仏教学的なことを学び、夕方のおつとめがあって。18時に夜ご飯を食べて21時に消灯という流れでしたね。僕は18歳で修行に行ったんですけど、その時は54歳の方もいました。お坊さんの修業はつらいとイメージする方も多いと思いますが、一緒に修行をする仲間たちがいるということがとても心強かったですね。今思うと、とても思い出深いです。

―僧侶としてやりがいを感じる瞬間は?
檀家さんの心に寄り添えた時ですね。月に何人かご相談をしに来る方がいらっしゃるんですけど、檀家さんがお寺に来る時って、何らかの想いを持っておいでになるんですよ。そこでお話をさせていただいて、帰っていく時の表情がいらっしゃった時よりも穏やかになっているのを見たりすると、檀家さんの心に寄り添うことができたのかなと思うことができます。そういったことは僧侶としての醍醐味じゃないかなと思いますね。

―全国の高校生に伝えたいことは?
教科書的な言葉になってしまうんですけど、“感謝”という言葉を忘れないでほしいです。高校生である今はなかなか理解できない言葉かもしれないけれど、今自分がこうして生きているということは、自分を産んでくれた両親がいて、その両親が育ててくれたからこそ、ここまで成長できているんですよね。両親に限らずとも、嫌なことがあれば友達に相談したり、人が生まれて成長するということは、いろいろな人の助けがあるからこそできることなんです。自分が今生きているということを突き詰めていくと“感謝”という言葉になると思いますし、常に忘れないでほしい言葉でもありますね。

お仕事言葉辞典>>>僧侶編

【檀家】だんか
その寺院にお墓を建てるなどして属し、先祖供養や御祈願の際に布施を通じて、寺院を支える家のこと。御本尊様にお経を唱えて寺院を守る僧侶に対して、経済的に寺院を支えているのが檀家である。



お仕事道具見せてください!

扇(せん)
僧侶が持ち歩くのがこの扇と念珠。念珠は、修業が終わり僧侶になった記念に師匠からもらうことが多く、紐を交換するなどして長く使用することができるそうです。


INFORMATION
山口さんが僧侶を務める寺院 真言宗 智山派 密蔵院

[住所]埼玉県川口市安行原2008
[HP]http://www.mituzoin.jp/