さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第8 回目は、シドニーオリンピックに自転車競技日本代表選手として出場し、現在はコーチ業、専門店の経営などを行う鈴木さんに迫ります。
― 仕事内容を教えてください。
まずマウンテンバイクという競技なのですが、1周4〜5kmくらいのコースを決められた数周回して、ゴールした順番で勝ち負けが決まるスポーツです。そのマウンテンバイクのヘッドコーチなので大きな意味では選手への指導が仕事となってきます。さらにマウンテンバイクという競技の特性で言うと、実際に使われるコースを試走して、自分で感じた速いと思うルートを選手に伝えたり、選手がより良い環境で試合に臨めるように調整をします。アドバイスを具現化して言葉で伝えたり、実際に撮影した動画を見せたりして、一人一人に指導していくのが重要な仕事です。
― 自転車競技を始めたキッカケを教えてください。
もともと中学生の時に見て憧れた “ロードレース”競技のプロになりたくて、オランダのナショナルチームのコーチのところにホームステイをしたのですが、「マウンテンバイクの方が向いている」と言われたんです。ロードレースって一般公道を走る競技なんですけど、僕登りはダントツで早かったんですよ。その当時マウンテンバイクの競技の内容も今と違っていて、長い登りがたくさんあるコースを走るようだったので、登りの速さがすごく重要で。それをコーチが見抜いてくれたこともありマウンテンバイクを本格的にやり始めました。
― ヘッドコーチになるまでの経緯を教えてください。
現役の選手を2007年の秋に引退して、スポーツバイクの専門店を始めたんです。そこで、スポーツバイクに初めて触れる人に対して魅力や楽しさを伝えることが増えて、何かを言葉にして伝えるという部分においてスキルアップができました。僕は選手時代、海外経験が一番豊富だったり、いろいろな経験をしてきたのですが、それを伝えることがなかったので、次の世代に残したいと思いヘッドコーチを始めました。
― スポーツバイクを広めるためにされている活動について教えてください。
風光明媚な長野県の自転車の素晴らしさを世界に広めるために、一般社団法人ライド長野という団体を起ち上げました。あとは専門学校のスポーツバイシクル学科のアドバイザーをしています。実はスポーツ自転車業界ってすごく人材不足なんです。でも世界的に見てマーケットは広がっているし、ビジネスとしても大きくなっているのですが若い人が入ってこなくて。まず学校の先生向けの説明会をした時に「そんな職業があるのか」というところから始まりました。スポーツバイクって定期的なメンテナンスが必要だし、100万円を超えるような高額な自転車を買い求める方もいらっしゃって。競技自体を楽しむ人はいるのですが、スポーツバイクについて学べるところがなかったので、専門学校のアドバイザーとなり若い人に魅力や技術を伝えようと思いました。ここで学んだ子たちには、小売店・メーカー・イベント関係の3つの柱から就職先を選んでもらって、スポーツ自転車業界を盛り上げて欲しいです。
― 読者の高校生にメッセージをお願いします。
僕は自転車に関わるいろいろな肩書きを持っているのですが、その全てのスペシャリストかと言われたらちょっと難しいんです。実際にお店にしてもメーカーにしてもその道の事細かなスペシャリストというのがあるので、自分がやりたいと思っていることがあるならそれにとことん興味を持って、スペシャリストを目指して欲しいと思います。
【バラカン】 ばらかん
“バラバラを完成車にする”の略。完成された自転車を販売するのではなく、自転車のフレーム本体だけを販売し、それにお客様の好みと予算にあった部品を組み合わせて、オーダーメイドの自転車を作り上げること。
経営するお店の修理スペース
なかなか一つの道具に絞り込むのが難しく……。自転車修理やメンテナンスに必要な道具は全てこのスペースに集約されています(笑)。