今を生きる人すべてにとって身近な存在でありながら、あまり知らない“オカネのハナシ”。高校生が分かりやすい視点から、税理士・水村先生が“オカネ”について教えます!
日本のYENとアメリカの$(ドル)
アメリカの大統領選挙の投票を終え、バイデン氏が優勢という時点でこの原稿を書いております。この記事をみなさんがご覧になるころには、決着しているのでしょうか。日本の首相指名選挙においては国会議員による投票によって決まるので、選挙において「不正だ! 裁判だ!」ということは起こりにくいのですが、アメリカの場合は市民による直接投票になっているので、こういうゴタゴタが起こりやすいのでしょうね。私が高校生だったころは、アメリカ大統領が誰であろうが正直あまり関心がなかったのですが、折角なので日本の通貨である円とアメリカの通貨であるドルの関係からお金のハナシをしてみようと思います。
円とドルの相場の歴史は社会の教科書で、ある程度触れられていると思います。ニクソン・ショック、スミソニアン合意、プラザ合意などの単語にラインマーカーを引いていたのではないでしょうか。各国の通貨の歴史には様々な背景がありますが、為替レートを、外国為替市場の需給により自由に変動させる制度、「変動相場制」に移行して以降は、その国の“国力”によって相場が動いてきました。
円高は輸出に不利?
“円高は輸出に不利です”などということを、暗号のように覚えて、答案用紙に書いた方もいるでしょう。確かに輸出に不利なのですが、その理由をシンプルに解説します。
輸出というのは日本の製品をアメリカに買ってもらうことを言います。例えばリンゴをアメリカに輸出するとします。リンゴ1個が100円、さらに円相場が1ドル100円であれば、リンゴ1個と引き換えに1ドルを手に入れることができます。しかし、1ドルが80円と円高になった場合、アメリカの人はこのリンゴに対し1.25ドル支払わなければ手に入れることができません。そうすると同じリンゴなのに以前に比べ割高となり、アメリカの人は買いたがらなくなるでしょう。要するに輸出に不利というのは、アメリカの人にも買ってもらいたいけど、円相場の影響で買われにくくなるから不利ということですね。
さてさて、コロナ禍の上、日本もアメリカも国のトップが交代し、大きな時代の転換を迎えようとしています。これからのみなさんが生きる時代がどのようになるのか、円相場との歴史を振り返りつつ想像してみてはいかがでしょうか。