【インタビュー】プロレスラー・永田裕志「キツい時に前を向いて立ち上がり、堂々と自分の道を歩いていける人が本当に強い人間」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第41 回は、新日本プロレス所属のプロレスラー・永田裕志選手。これまでに数々のタイトルを手にし、来年には現役生活30 周年を迎える“レジェンドレスラー”永田選手に迫ります。

【インタビュー】プロレスラー・永田裕志「キツい時に前を向いて立ち上がり、堂々と自分の道を歩いていける人が本当に強い人間」

 

永田 裕志(ながた ゆうじ)
千葉県出身。大学時代、アマチュア・レスリングに励み、92年3月に新日本プロレスへ入門。9月14日、松江市総合体育館における山本広吉(現:天山広吉)戦でデビューする。これまでに、IWGPヘビー級王座、NEVER無差別級王座、IWGPヘビー級タッグ王座、G1 CLIMAX 11優勝、NEW JAPAN CUP 2008、2012優勝など数々のタイトルを手にしている。

 

キツい時に前を向いて立ち上がり、堂々と自分の道を歩いていける人が本当に強い人間

 

学生時代はレスリングをやられていたとのことですが、レスリングを始めたきっかけを教えてください。

もともと小さい頃からスポーツをやっていたので、高校に入学してからは受験勉強に集中しようと思っていました。しかし自分の血が騒ぐところもあって、人があまりやらないスポーツをやってみたいと思い、行き着いたのがレスリングでした。あとは当時プロレスを観ることが好きだったので、なんとなくプロレスと共通するところに惹かれたのも、レスリングを始めた理由ですね。入部後は毎日練習を重ねて県で優勝し、国体で3位になり、国際大会にも出場しました。高校卒業後は日本体育大学に推薦で入ることができたのですが、そこでの練習がとにかくキツくて。それまで自分はそこそこ強いと思っていた自信が完璧に打ち砕かれました。そこからはひたすら厳しい練習を耐え、大学2年生の時には全日本学生選手権で優勝するなど、日々頑張ってきたことが徐々に花開いていきました。

 

そこからなぜプロレスラーになろうと思ったのですか?

大学を卒業してから一年は、いろいろな大会に出場してオリンピックを目指していたのですが、惜しいところで出場資格を取ることができなくて。ちょうどその時期に自分の生死について考え出すようになったんです。“人間は死んでしまったらどうなるんだろう”ということからはじまり、いろいろなことを考えているうちに“自分が生きた証を残したい”と思うようになりました。さらに、自分の人生を世の中に投影できるような仕事がしたいと思ったんですよね。それはどんな仕事だろうと考えた時に頭に浮かんだのが、小さい頃から観てきたプロレスラーだったんです。そこからプロレスの門を叩きました。

 

そこからどのようにプロになられたのですか?

レスリング選手としての僕を知っている方がスカウトをしてくださり、新日本プロレスに入りました。デビュー試合は入門してから4ヶ月後だったので、比較的早かったですね。リングに立って、リングアナウンサーの方に自分の名前をコールしてもらった時には「本当にプロレスラーになったんだ」と実感しました。その後7分くらいで天山選手(当時の山本広吉選手)に技を決められはしたのですが、プロレス人生の第一歩を踏み出せたという充実感と嬉しさがあったことを覚えています。

 

プロレスラーになってよかったと思うことを教えてください。

いろいろな方と交流できることですかね。いろいろな職種の方とお会いする機会があるので、本当に視野が広くなったと思います。例えば、何か言われた時にあからさまに否定するのではなく、「この場合はこうすればいいのではないか」というような考え方ができるようになりました。人との出会いは自分の視野を広げてくれるんだと気づくことができましたし、これはたぶんプロレスラーになっていなければできていなかったことなのかなとも思います。

 

デビューから現在に至るまで、リングに立ち続けられている理由を教えてください。

肉体面でいえば、周りの方々に恵まれたということですかね。プロレスに怪我はつきもので、怪我をして引退する方もいるのですが、僕が幸運だったのは、体を怪我した時にメンテナンスをしてくださる、立派な名医やトレーナーに出会えたことです。それは大きな理由だと思います。精神面でいうと、今まで苦しいことがある度に“強いって何だろう”と考えてきました。試合に勝つ時もあれば負ける時もありますし、試合を観てくれる人は、勝った時には褒めてくれるし、負けた時にはバッシングすることもあります。でもそれが、“自分の人生を投影する”ということなのかなとも思ったりして。そういう中で“本当に強い人間って何だろう”と考えた時に、キツい時にそのまま沈んでしまうのではなく、前を向いて立ち上がり堂々と自分の道を歩いていける人が本当に強い人間なんだと思いました。これは僕がプロレス生活30 年の中で見つけた答えです。常に“強い人間”であれるように意識的に行動してきたことが、今にも繋がっていると思います。

 

11月28日には、永田選手がプロモーターを務める「NAGATALOCK設立15周年記念 BLUE JUSTICE X ~青義復活~」を開催されますが、こちらはどんな大会になっていますか?

実はこの興行は昨年実施をする予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響もあり開催を断念したんです。開催を試みようとはしたのですが、僕自身、プロモーターとしてのコロナウイルスに対する知識もなく、自分たちの力不足もあり開催できなかったので、今回は「青義復活」というテーマを掲げました。目の前にある困難から逃げて何もしないということは、人間誰でもできるんです。ただそうではなくて、その困難を自分たちも理解した上で、乗り越えようとする能力って必要だと思うんですよね。もしかしたらどこかで失敗することもあるかもしれないですが、前に進まなければ何も変わらないので、今年は前に進もうと思い開催を決めました。観客の方は感染対策で声を出すことはできませんし、拍手でしか喜びを発散させることはできませんが、それでも我々の戦いで、観る人に力や勇気をあげることができたらいいなと思います。

 

高校生にメッセージをお願いします。

自分が続けてきたことを辞めたいと思った時に、本当にそこで辞めてしまっていいのかと、自分自身に問いかけてほしいです。人生の岐路はこれからたくさん出てくると思いますし、そこで右か左かを選ぶ時に、成功する人もいれば、失敗する人もいます。ただ決断をする時に、しっかりと自分自身に問いかけて、いろいろな人の意見も聴いた上で決めることができれば、仮に失敗しても悔いは残らないと思いますし、その失敗から立ち上がることもできると思うんです。結果が吉でも凶でも、悔いのない選択をしてほしいなと思います。

 

お仕事言葉辞典 プロレスラー編

【しょっぱい】 しょっぱい
“つまらない”“情けない”などの意味で使われる隠語。プロレスの試合においては、つまらない試合を見た時に“しょっぱい試合”などのように使われる。

 

お仕事道具見せてください!
【インタビュー】プロレスラー・永田裕志「キツい時に前を向いて立ち上がり、堂々と自分の道を歩いていける人が本当に強い人間」

筋膜リリースローラー
電動の筋膜リリースローラーは、自宅にいる際、体をリラックスさせるために使用。選手として年を重ねた現在、食事や身体のケアには特に気を遣っているそうです。

INFORMATION

永田選手がプロモーターを務める大会
「NAGATALOCK設立15周年記念 BLUE JUSTICE X ~青義復活~」

【インタビュー】プロレスラー・永田裕志「キツい時に前を向いて立ち上がり、堂々と自分の道を歩いていける人が本当に強い人間」