【インタビュー】番組ディレクター・花岡昌平「取材対象者の想いをただ代弁するだけのメディアではない」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第43回は、テレビ東京で報道番組を担当する花岡昌平さん。選挙特番などの報道番組を通して、正確な情報をスピーディーに伝える番組ディレクターに迫ります。

【インタビュー】番組ディレクター・花岡昌平「取材対象者の想いをただ代弁するだけのメディアではない」

 

花岡 昌平(はなおか しょうへい)
栃木県出身。東京大学の文学部行動文化学科を卒業後、“スポーツ番組を作りたい”との想いからテレビ東京に入社。営業職を4年間担当した後、スポーツ番組を9年間担当。2年前に報道番組を担当することになり、現在はテレビ東京報道局・経済番組センター・経済プロジェクトチームに所属。これまでに選挙特番をはじめとする特別番組を担当。12月には、担当番組『CHANGE MAKER U-18 未来を変える高校生 日本一決定戦 SUPPORTED BY NIPPON FOOD SHIFT』が放送される。

 

取材対象者の想いをただ代弁するだけのメディアではない

 

仕事内容を教えてください。

報道系の番組を担当しており、ディレクターとして取材をしたり、番組内容を考えたりしています。スタジオ収録をする際には、台本を書いたり、番組作りに関連する一通りの業務を行っています。レギュラー番組というよりは特別番組を担当することが多いですね。

 

現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。

高校までは陸上競技、大学ではグランドホッケーというスポーツをやっていて、小さい頃からテレビが好きなこともあり、就職活動をする際には“スポーツ番組を作りたい”という想いがありました。さらにそのスポーツ番組で、“グランドホッケーなどマイナーなスポーツを取り上げたい”という想いもあり、テレビ東京の採用試験を受けました。実際に入社してからは、営業を4年間くらいやって、その後スポーツ番組を担当し、目標にしていたグランドホッケーの中継もできて。スポーツ番組を担当してから9 年くらい経ったタイミングで、報道番組をやりたいと思うようになり、約2年前に報道番組を担当するようになりました。

 

仕事をする中でのやりがいを教えてください。

最初に感じるやりがいは、自分が納得できるものを作り上げることができた時ですね。そこからはその映像を観てもらった取材対象者の方や一般視聴者の方が、“良かったな”と感じてくれると、やって良かったなと思うことができます。

 

仕事をする中で大変だと感じる点を教えてください。

取材をさせていただいた方の想いと、こちらが想定しているもの、こちらの描き方の認識がズレてしまうことがあるので、そういった時は難しさを感じますね。我々は取材対象者の想いをただ代弁するだけのメディアではないので、そこに付加価値をつけるために逆の立場の人の意見を入れたりするんです。それをすることによって、もともとの取材対象者は“嫌だな”と感じてしまう要素を入れざるを得なくなることもあるんですよね。だからそこの塩梅はとても難しいです。間違ったことは伝えてはいけないという大前提がある中で、どう伝えるかというのはこちらの裁量にかかる部分がありますし、その中で取材対象者の想いをどう汲むことができるかとか、そのバランスは難しいなと思います。取材は人対人なので、決まったゴールがないというのは逆に面白い部分でもあるんですけどね。そういった人と人との想いをすり合わせた末にできたものは感慨深いものになります。

 

仕事をする中でのポリシーを教えてください。

正しい情報を報道するということはもちろんなのですが、独りよがりになっていないかということは常に意識するようにしています。何度も取材を重ねたり、何度もVTRを制作していると、自分の中では当たり前の知識として入っているものが、他の人には分からないことだったりします。だから初めて観る人にどこまで伝わるか、逆に肩入れをしすぎて偏った内容になっていないかなどは気にしていますね。そのために、まずは自分自身の頭を真っ白にして、自分が作った内容を観るようにしています。

 

12月26日には、高校生のプレゼンコンテスト『CHANGE MAKER U-18』がテレビ東京にて放送されますが、コンテスト立ち上げの経緯を教えてください。

テレビ東京で、池上彰さんがMCを務める『特命!池上ベンチャーズ』という番組を不定期で放送していて。その番組では社会を変えようとしているベンチャー起業の若い社長さんが、池上さんとスタジオでやり取りをされるのですが、社会人だけではなく、社会を変えたいと思う高校生も活躍できる場を提供するために立ち上げたのが、この『CHANGE MAKER U-18』です。僕も実際に応募作品を見たのですが、参加高校生は自分たちでクオリティの高い資料を作り、熱意を持ってプレゼンしてくれているなという印象を持ちましたね。

 

出場する高校生にはどんなことを期待していますか?

12月26日に放送される決勝大会はプレゼンをする場になるのですが、ただ紙を読み上げる普通のプレゼンにならないような番組にはしたいと思っています。だから出場する高校生も体や物を使ったり、表現の幅を増やしてほしいですね。あまり凝り固まった考えにならずに、何をしたら面白いか、何をしたら伝わるかというのを考えて、萎縮せずに思い切ってやってほしいなと思っています。

 

『CHANGE MAKER U-18』を通して実際に高校生と接した際、高校生に対してどんな印象を持たれましたか?

とにかくしっかりしているなと思いました。プレゼンをした後にも「まだ納得していない」と言っていた子もいますし、この番組に出演するためにやっているわけではなく、もともと“何かを変えたい”“世の中を良くしたい”という想いを持った人ばかりなんですよね。そういった人たちが、こういった番組をきっかけに世に出てくるだけですごく嬉しいです。私自身、社会のことを考えている高校生がこんなに日本にいるんだと知れるきっかけになりました。

 

高校生にメッセージをお願いします。

とにかく、何でも選り好みせずにやってほしいです。億劫にならずに何でも面白がって挑戦してみてください。そうすれば何かしら見つかると思いますし、挑戦したことで人との繋がりが増えたり、将来に繋がったりと、自分にとってプラスになることは必ずあります。高校生は皆そんな可能性を秘めているので、まずは行動してみてください。

 

 

お仕事言葉辞典 番組ディレクター編

【わらう】わらう

撮影や作業などをする際に、邪魔なものを片付けたり移動させること。映像に映り込んでしまうものなどに対して「わらって」と指示し、片付け・移動を行う。語源は諸説あり、“「取り払う(取っ払う)」が変化したもの”など。似たものとして「ハケる」などの言葉がある。

 

お仕事道具見せてください!
【インタビュー】番組ディレクター・花岡昌平「取材対象者の想いをただ代弁するだけのメディアではない」

業務に欠かせないノート
自身を“アナログ人間”と言う花岡さんは、やらなければいけない作業のメモなどはノートに書き込み、済んだら消すということを繰り返すのだとか。取材時のメモもこのノートで行うそうです。

 

INFORMATION

CHANGE MAKER U-18 未来を変える高校生 日本一決定戦 SUPPORTED BY NIPPON FOOD SHIFT』

【インタビュー】番組ディレクター・花岡昌平「取材対象者の想いをただ代弁するだけのメディアではない」

放送日時:12月26日(日)22:00~23:24(予定)
テレビ東京系6局ネット

公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/changemakerU18/