北京オリンピックアーチェリー日本代表/高校教師の守屋龍一さんにインタビュー!

2008年の北京オリンピックにアーチェリー日本代表として出場し、現在は大阪府岸和田市にある岸和田市立産業高等学校で保健体育教科担当・アーチェリー部顧問を務める守屋龍一さん。今回はそんな守屋さんにインタビューを実施。競技を始めたきっかけや、部活顧問としての指導方法について聞きました。

北京オリンピックアーチェリー日本代表/高校教師の守屋龍一さんにインタビュー!
守屋龍一(※提供画像)

 

守屋龍一

高校入学とともにアーチェリーを始め、高校時代には全日本学生アーチェリー個人選手権大会1位、国民体育大会個人3位などの成績を収める。2008年には北京オリンピックにアーチェリー日本代表として出場し6位入賞。現在は母校でもある岸和田市立産業高等学校で保健体育教科担当・アーチェリー部顧問を務める。

 

アーチェリーを始めたきっかけを教えてください。

もともと中学生の時は野球をやっていて、アーチェリーを始めたのは高校生になってからでした。高校でも友達と一緒に野球部に入ろうかと思ったのですが、強い野球部だったので親に反対をされて。そこで親に「弓道をやりなさい」と言われたんです。だけど弓道部には女子が多く、その中ではやっていけないと思い、弓道に似たスポーツということでアーチェリーを始めました。

 

野球に比べ、アーチェリーの方が熱中できた理由は何だと思いますか?

野球ってみんなスタートが違うじゃないですか。僕は野球部に入った時は初心者だったので何もわからなかったのですが、クラブチームで幼少期からやっているような子は、動きを感覚で理解しているんですよね。何も分からない僕は打ち方や投げ方などの初歩的なことを教えてもらいたかったのですがそんな時間はなく、そうこうしているうちに中学校生活が終わってしまったんです。だから野球に関しては本当に下手なままで。それに比べてアーチェリーは高校から始める人が多く、みんなスタートが一緒なので、全部イチから教えてもらえたんです。だから上達することができたし、熱中できたんだと思います

 

競技を始めて8年後にはオリンピックに出場されましたが、選手として世界を見据えたのはいつ頃でしたか?

高校時代の顧問の先生が「お前オリンピックに出られるよ」みたいなことを軽い感じで言ってくれたんです。その時の僕は何も考えていないただの若造だったので「俺いけんねや!」みたいな感じで、良い成績も残していないのに謎の自信が出てきて(笑)。高校3年生の時には世界で1番になりたいと思っていました。

 

オリンピック出場が決定した時の心境を教えてください。

自分の中では2004年のアテネオリンピックに出場する予定だったんです。しかし、高校3年生の秋にあったアテネオリンピックへの選考に繋がる重要な試合で、びっくりするくらい悪い成績を出してしまい、第一次選考会で落ちてしまいました。実力的にはアテネの代表選手と勝負しても負けないくらいだったのでチャンスはあったのですが、選考には漏れてしまったため、日本代表になることができなかったんです。それを逃してから4年越しに北京オリンピックへの出場を決められたので、自分的にはようやくだなという感じでしたね。

 

オリンピックでは6位入賞という結果でしたが、どう思われましたか?

やっぱり悔しかったですね。北京オリンピックに出場したのが23 歳の時だったのですが、自分的には20 歳くらいの時が一番調子が良かったんです。そこから変にカッコつけてしまったり、プライドが高くなってしまって。今考えてみると調子に乗っていたなと思います。背伸びをしていたことが多く、プレーも満足にできていなかったのかなと思いますね。

 

現役引退後はどうして高校の先生になられたのですか

北京オリンピックが終了し、次のロンドンオリンピックまでは当時所属していた実業団で面倒を見てもらっていたのですが、その後は次のステージに行こうと思って。もともと商業の教員免許は持っていたのですが、保健体育の免許を取るために在職中に大学に通わせてもらいました。教師を選んだのは、教員免許を持っていたからというのもありますし、自分が一番得意なアーチェリーと関わることができるからというのが大きいですね。

 

現在は母校の岸和田市立産業高校にてアーチェリー部の顧問をされていますが、普段はどのような練習内容で指導をされているのですか?

アーチェリーは基本矢を射るということしかないので、メインは射撃練習です。ただ、僕はトレーニングにも重きを置いた方が良いと思っているので、試合が少ない冬場はトレーニングが多くなります。僕は選手に対して、とにかく楽しく競技をやってほしいと思っています。僕自身がアーチェリーを楽しむことなくロボットのように競技をやっていた時期があったんです。僕はそれが嫌だったし楽しくなくて。高校生がやるなら選手たちが楽しくできるようにというのは一番大切にしています。練習中も、本来だったら集中力を高めるためにお喋りとかもあまりしないと思うのですが、常識の範囲内で試合でも練習でもベラベラ喋れるくらいの方が、度胸があって良いと思い普通に喋らせています。

 

アーチェリーはメンタル面が重要となるスポーツですが、メンタルを鍛えるために選手にさせていることはありますか?

これが合っているかはわからないのですが、しっかりとトレーニングをさせるようにしています。やっぱり何かを乗り切った、乗り越えたという経験を持ってほしいんです。言葉で伝えてメンタルが強くなれば良いのですがなかなかそうはならないので、一つひとつのメニューに対して“これができた”というように達成したことを実感させることで、メンタルを強くしているつもりです。

 

強い選手に共通することは何だと思いますか?

今フッと思い浮かんだのは“マイペース”。マイペースと言ってもペースが遅いという意味ではなく、「このタイミングで自分はこうなる」というペース配分ができる人ですかね。その時一瞬の強さというのは違う要素になってくるとは思うのですが、自分のペースをしっかりと持ち、何年もかけて上達できる人は強いと思います。

 

今後はどのようにアーチェリーを広めたいですか?

めちゃくちゃ悩んでいます。こういったメディア露出はチャンスだと思い、以前からいろいろなところで取り上げていただいているのですが、そこからどうやって派生させていこうという部分は悩みどころですね。今は少しずつネットワークを広げていきたいと思い、子供向けのアーチェリー教室を開催したりもしています。これをもっと続けていき、まずはこの大阪の岸和田からしっかりとアーチェリーという文化を根付かせていきたいです。アーチェリーでも、野球の新庄ビッグボスみたいな、選手より目立つ監督がいても良いと思いますし、いろいろな試行錯誤をして広められたら良いなと思っています。

 

守屋先生が思うアーチェリーの魅力を教えてください。

やっぱり狙って放った矢がど真ん中に当たる時ってめちゃくちゃ気持ち良いんですよ。真ん中を狙うことって最初は遊びみたいな感覚で始めるんですけど、それが試合で出来た時にはこれ以上ない達成感があって“僕はこんなことできるんだ”と、新しい自分に出会えるんです。アーチェリーというスポーツ自体が、楽しいと思いやすい競技なんだと思います。さらにアーチェリーはだいたいの人のスタートラインが一緒だったり、新しく始めやすいスポーツだと思うので、ぜひ挑戦してみてほしいです。

 

2月には北京オリンピックが開催されます。出場する選手へエールをお願いします。

新型コロナウイルスの影響によりどうなるかはわかりませんが、選手たちは日々本当に努力をされていると思います。どの競技でも日本代表になるまでが大変ですし、もちろんなってからも大変だと思うので、ありきたりな応援しかできませんが、今の実力をしっかりと出していただき、悔いのないよう全力でプレーしてください。

 

高校生にメッセージをお願いします。

小学校・中学校というのは義務教育なので、みんなと同じことをしていれば卒業できると思うのですが、高校は義務教育ではないのでそれぞれが選んで来ているはずです。なんとなく高校を選んだ人もいると思いますが、自分で選んだ道なのは確かです。そして、これからの人生も選択の連続です。高校で周りの友達に足並みを合わせて進むことも必要かもしれないですが、高校生というのは自分が本当にやりたいことや興味があることに向かって歩き始める時期です。一度きりの自分の人生なのでやりたいことをたくさんやってください。可能性は無限大です。そして、忘れずに勉強もしっかりとしてください!