みなさんは最低賃金というものをご存じでしょうか? 最低賃金とはその名の通り、最低の賃金であって、雇用主はこの時給以下で働かせてはならないというものです。令和4年10月改定の最低賃金を見てみると、最も高い東京都で時給1,072円。最も低いのが青森県をはじめとした10の県で時給853円となっており、全ての地域で前年比30円以上の引き上げが行われています。そんな最低賃金を、いくつかの視点からひも解いてみましょう。
最低賃金の決め方については、厚生労働省の中央最低賃金審議会という機関で、各都道府県に対し、最低賃金の上げ幅の目安を示します。その後、各都道府県においてディスカッションが行われ、最終的にはそれぞれの都道府県の労働局長によって決定がされます。このディスカッションでは物価や地価の動向、最低賃金が引き上げられた時の各所への影響が話し合われています。みなさんにとって給料が上がることは純粋に嬉しいことではあるものの、給与を支払う側に立つと支出が増えることになるため多方面の影響を加味しなければなりません。そして、このように決められた最低賃金ですが、給与を支払う立場の者は必ず守らなければなりません。その根拠を辿ると日本国憲法にたどり着きます。
みなさんは法律の原文を読んだことはありますか? せっかくですので一部抜粋して掲載します。
こちらはおなじみ日本の最高法規である日本国憲法です。学校の授業でも学ぶと思いますが、この憲法の27条において、「賃金……に関する基準は、法律でこれを定める」と記載されています。さらにこの27条をより具体的に定めたものが、次の最低賃金法です。
このように最低賃金の改定は憲法、そして法律の根拠によることがわかります。普段の学習の中で、憲法が実生活と結びついていることを想像する機会はあまりないとは思いますが、実はこのようにみなさんの生活の一部にもしっかり反映されています。ちなみにこの法律を守らなかった場合には、50万円以下の罰金が科されます。
最低賃金と物価の関係
以前よりこのコラムで言及していますが、日本を含め世界の多くの国ではインフレ(物価高)になっています。総務省で2022年8月の物価上昇率を発表していますが、物価上昇率は前年同月比で3%上昇しています。要するに昨年の8月に100円で買えていたものが今年の8月は103円で売られているということです。
今回の最低賃金の改定によって東京都の最低賃金は1,041円から1,072円に引き上げられましたが、上昇率を計算してみると2.97%UPということで、ほぼ物価上昇率と連動しています。理論的には給与が上がった分、物価も上がっているということですが、みなさんの生活にはどう影響するでしょうか。