若者マーケティング研究機関『SHIBUYA109 lab.』は、外部調査パネルによるWEB調査とSHIBUYA109 lab.独自ネットワークによるインタビューから「Z世代のお金と投資に関する意識調査」を行った。
【1】Z世代が現代を生き抜くために必要と感じる知識第1位は「お金の知識」。しかし、現状の金融商品への理解率にギャップあり
金融資産の中で理解しているもの1位は「預金」となりました。預金以外の金融商品に関しては、金融商品名を聞いたことはあるものの、理解には及んでいないことがわかります。
【2】Z世代の平均貯金額は去年より微増。目的は「1~2年先の近い未来へ向けた貯蓄」。不確実な時代を生きる彼らが描くのは「安定」・「バランスが取れた」未来
貯金の目的は「旅行」など、1~2年後に起こり得る大きい金額の消費にむけて貯蓄していることがわかりました。常に不安定な社会を生きてきたZ世代は、直近の未来を見据えた行動が垣間見えます。
【3】収入源は平均2.2個!合理主義なZ世代は、収入もスキル獲得も支払いも「リスク分散」を意識
「収入源を分散した方が、リスクも分散できそう」と言った声など、Z世代の特徴である「失敗したくない」という思いが表れた意見が聞かれました。
【4】Z世代の「投資に興味あり」は半数を超えるが実際の投資層は約1割。そのギャップの原因は
投資については「難しい」「ハイリスク」などのイメージが多数を占めており、投資をしていない理由も「投資に関する知識がなく、何から始めていいかわからない」が1位となりました。知識の無さやリスクを懸念している傾向が見られました。
【5】SHIBUYA109 lab.所長が分析!不安定な時代を生き抜くZ世代ならではのお金に関する価値観。信頼できる学びの場を
経済状況が不安定な中で育ったZ世代は、そんな中でもバランスが取れた、安定した生活を送れることに価値を感じており、数年先の未来のための貯蓄や収入源・支払いの分散は、不確実な時代に生きるからこその選択だと分析できます。
【1】Z世代が現代を生き抜くために必要と感じる知識第1位は「お金の知識」。
しかし、現状の金融商品への理解率にギャップあり
Z世代に「現代を生き抜くための能力や知識としてあなたが必要だと思うもの※1」を聞いたところ、「語学力(43.0%)」や「コミュニケーション力(59.3%)」を抜いて「お金に関する知識」と答えた人が73.0%で最多となりました。Z世代がいかにお金の知識の必要性を感じているかがわかります。
図1 Q.現代社会を生き抜くための能力や知識としてあなたが必要だと思うものを教えてください。(複数回答)
n=400(男性:200/女性:200)
しかし、金融資産に関する理解度※図2を見てみると、必要性を感じながらも実態が追いついていないのが現状です。投資信託や積立NISA、NFTなど、様々な金融商品について「認知(聞いたことがある)」「理解」「興味」の割合を調査してみると、「預金」のみが「認知」「理解」で半数を超える1位となりました。理解率2位は「特になし」となり、預金以外の商品に関しては、認知率と理解率において2倍以上の差が広がる結果となりました。
金融商品名を聞いたことはあるものの、理解には及んでいないことがわかります。
図2 Q.以下の選択肢の中から、あなたが聞いたことあるもの・理解しているもの・興味があるものを選択してください。(複数回答)
n=400(男性:200/女性:200)
【2】Z世代の平均貯金額は去年より微増。目的は「1~2年先の近い未来へ向けた貯蓄」。
不確実な時代を生きる彼らが描くのは「安定」・「バランスの取れた」未来
次にZ世代の貯金額※図3について見ていくと、昨年に引き続き、10万円以内が1位となりました。貯金残高は、平均金額が全体:391,118円、男性:360,759円、女性:423,973円となりました。
昨年の調査と比較し、全体では56,820円、男性では38,616円、女性では76,720円の増加となっています。
貯金が増えた背景として、グループインタビューでは「友だちと遊びに行くためのお金が減った」という回答があり、去年から継続的にコロナの影響を受けていることが大きな要因だと考えられます。貯金の目的は「コロナ禍が収束したら海外旅行をしたい」「特に目的は決まっていないが、大きい買い物や旅行の足しにする」などが挙げられ、具体的な用途があるわけではなく、1~2年後に起こり得る大きい金額の消費にむけて貯蓄していることがわかります。常に不安定な社会を生きてきたZ世代は、どうなるか分からない遠い未来よりも直近の未来を見据えた行動が垣間見えます。
図3 Q.あなたの貯金額を教えてください。(単一回答)
n=400(男性:200/女性:200)
また、就職後の暮らしの将来像※図4については、「収入を得ながら、趣味や家庭などのプライベートも充実させたい(54.2%)」が1位となっており、次点で回答の多かった「安定した収入を得て、平均的な生活を送りたい(16.8%)」が「仕事に励み、人よりもお金を稼ぎたい(10.8%)」を上回っていることから、多くのZ世代が「ワークライフバランス」「安定」を重視していることがわかります。
図4 Q.あなたの将来像としてあてはまるものを教えてください。(単一回答)
n=400(男性:200/女性:200)
【3】収入源は平均2.2個!合理主義なZ世代は、収入もスキル獲得も支払いも「リスク分散」を意識
それでは、Z世代はどのようにお金のやりくりをしているのでしょうか。
Z世代の消費活動のキーワードは「分散」。収入源も平均2.2個保有していることがわかりました。アルバイトも一つの勤務先だけでなく複数掛け持ちをしている事例があったほか、ポイントによる収入やフリマアプリの活用も一般的になっています。複数の収入源を求めるようになったきっかけとして、グループインタビューでは「焼き肉屋で働いていたが、コロナ禍の影響でシフトに入れなくなり、イベントスタッフの仕事を始めた」など、コロナの影響を受けている事例が複数聞かれました。
さらに、このような価値観は将来の仕事観にも影響しています。グループインタビューにて「(社会人になってから)副業したいか?」という質問をしたところ、男子全員がYESと回答。「コロナ禍を経験して、一つの仕事がなくなった時に別の手段があればいいと思った」という回答のほか、「一つの仕事だけじゃなく、他のスキルも身につけるために副業がしたい」「収入源を分散したら新鮮味もあるし、働く場所も選べる。リスクも分散できそう」など、今後も収入・スキルともに複数に分散して獲得し、リスクを避けようとする傾向が見られています。SHIBUYA109 lab.の過去の調査でもZ世代は「失敗したくない」という気持ちが強く、リスクを分散させる傾向にあることがわかっており、収入・スキルともに分散志向なのはZ世代ならではの特徴とも言えるでしょう。
決済方法においても「分散」がキーワードになりました。利用する決済方法は現金が94.5%で圧倒的ですが、交通系ICカード(60.6%)やクレジットカード(54.0%)、PayPayなどの電子決済(53.5%)などの利用率も高まっています。決済方法についてグループインタビューでは、「衝動買いするタイプなので、請求額が怖いから基本は現金・デビットカードを使っている。ポイントが貯まりやすいので、少額のお金は電子決済を使用している」「ポイント還元率が良いクレジットカードを主に使っているが、友達と割勘するときは電子決済を使う」といった声が聞かれ、決済時にメリットを考えながら使い分けていることがわかります。
【4】Z世代の「投資に興味あり」は半数を超えるが実際の投資層は約1割。そのギャップの原因は
今回の調査では、Z世代の投資意識※図5についても聞きました。すでに現在「投資をしている」と答えたのは全体の12.3%と1割程度。ただし、「投資はまだしていないが興味はある・必要だと感じる」と回答した人は51.2%と半数を超えています。
図5 Q.投資について、あなたにあてはまるものを教えてください。(単一回答)
n=400(男性:200/女性:200)
しかし、投資については「難しい」「ハイリスク」などのイメージ※図6が多数を占めており、投資をしていない理由※図7も「投資に関する知識がなく、何から始めていいかわからない(29.6%)」、「お金が減るリスクがある(25.4%)」「投資に対する知識がなく、まずは知識をつけるところから始めたい(20.8%)」など、知識の無さやリスクを懸念している傾向が見られました。
図6 Q.あなたは「投資」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべますか。 (自由回答)
n=400(男性:200/女性:200)
※UserLocal テキストマイニングで分析
図7 Q. 投資をしていない理由を教えてください。 (複数回答)
※回答者=投資をしていない方 n=351(男性:165/女性:186)
グループインタビューでも、「浅はかな知識でやるものではないと思うので先送りしている」「調べて学びたいが、言葉自体が難しい」「書籍で勉強をしたいが、本当に参考になるものを見つけられていない。勉強するための準備段階として、SNSやネットでどんな勉強方法や書籍が良いか情報収集をしている」、さらに「SNSの情報はうさんくさい」など適切な情報源の不足について言及がありました。
また、「お金がかかる」「今は投資できる額も少なく、リターンも少ない。その上お金を失う可能性があるなら、普通にバイトで稼いだほうが楽」「投資して少額の金銭的な利益を得るよりも、服を購入してメルカリで売り、別のモノを購入できるほうが得られるものが多い」など、投資に対してハードルの高さを感じ、始めるコストに比べてリターンが少ない印象を受けている側面が見られました。日頃の体験や消費でも「コストパフォーマンス」を重視する傾向にあると言われるZ世代は、投資の勉強や実施においても、費やす時間やお金と、そこから得られるものを吟味しているようです。
投資について理想の学び方※図8を聞いた質問では、「学校の選択授業の中で自分で選んで学びたい(38.3%)」「学校の必須カリキュラムとして学びたい(36.1%)」など、学校で学びたいという声が7割を超え、「お金のしくみや流れなどの基礎から学びたい(28.4%)」という声も多かったことから、信用できる教育機関でのわかりやすい金融教育を求めていることがわかりました。また、学ぶ時期※図9としては、「大学や専門学校時代」が37.8%と最も多くなっています。背景として、グループインタビューにて「ひとり暮らしやバイトをはじめて自分のお金を持たないと実感がわかないと思う」などの意見が聞かれました。
図8 Q. 投資についてどのように学びたいと思いますか。あなたの理想を教えてください。(複数回答)
n=400(男性:200/女性:200)
図9 Q.投資に関することを学ぶのに適切だと思うタイミングを教えてください。(単一回答)
n=400(男性:200/女性:200)
【5】SHIBUYA109 lab.所長が分析!不安定な時代を生き抜くZ世代ならではのお金に関する価値観。信頼できる学びの場を
2022年度から学習指導要領の改訂により高校の授業で金融教育が取り入れられることもあり、「お金に関する知識」に対する注目はより高まっていますが、Z世代のお金に関する価値観は、主に彼らの生まれ育った時代背景が大きく影響しています。彼らは生まれた時から不況で、経済状況が不安定な中で育ち、またこの先も正解のない時代を生きることを認識しています。そのため、そんな中でもバランスが取れた、安定した生活が送れることに価値を感じており、数年先の未来のための貯蓄や収入源・支払いの分散も、不確実な時代に生きるからこその選択と言えるでしょう。また彼らの普段の情報収集の中心はSNSですが、お金に関する情報については「正しい情報かどうか」の判断軸を現状持ち合わせていないため、時には誤った情報も流れるSNSでの情報接触に慎重な姿勢も見られています。
まずは彼らが安心・信頼できる学びの場や、情報環境の整備が必要と考えます。
■アンケート調査概要
①WEB調査
調査期間:2022年3月
調査パネル:外部調査会社のアンケートパネルを使用
居住地:東京都
性別:男女
年齢:18~24歳
対象:大学生・短大・専門学校生
回答者数:400名(男性200名/女性200名)
※回答率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までを表示しているため、合計数値は必ずしも100%とはならない場合があります。
②SHIBUYA109 lab.による定性調査
グループインタビュー 対象者条件: 大学生 男子4名、女子4名 2G 合計8名
※その他過去定性調査をもとに考察
SHIBUYA109 lab.調べ
SHIBUYA109 lab.:https://shibuya109lab.jp
※記載の会社名、製品名、サービス名等は、それぞれ各社の商標または登録商標です。
※TWITTER、TWEET(ツイート)、 RETWEET(リツイート)、Twitter のロゴは Twitter, Inc.またはその関連会社の登録商標です。