【インタビュー】漫画家 おざわ ゆき「自分が知らない人が自分の作品を知ってくれているというのが嬉しい」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第60 回は、多岐にわたるジャンルの作品を世に送り出し、複数の受賞歴を持つ漫画家・おざわゆきさん。現在も女性漫画誌『BE・LOVE』で連載を持つおざわさんに迫ります。

【インタビュー】漫画家 おざわ ゆき「自分が知らない人が自分の作品を知ってくれているというのが嬉しい」

おざわ ゆき
愛知県出身。小学生の頃から漫画家を志し、高校1年生の時に漫画家デビュー。2012年に、父のシベリア抑留体験を元に描かれた『凍りの掌』で第16回 文化庁メディア芸術祭 マンガ部門新人賞を受賞。2015年、『凍りの掌』と、母の戦争体験を元に描かれた『あとかたの街』で、第44回日本漫画家協会大賞を受賞。現在は、女性漫画誌『BE・LOVE』にて『またのお越しを』、『officeYOU』にて『LP 〜ライフ・パートナー〜3番目の配偶者』が連載中。その他著書に『傘寿まり子』など。

 

◆自分が知らない人が自分の作品を知ってくれているというのが嬉しい

仕事内容を教えてください。

漫画を描く流れとして、まずはストーリーの構想を練り、あらすじである“プロット”というものを書き出します。それを一旦出版社の編集さんに見せ、そこで出た指摘を直していき、次に“ネーム”と言われるものを書き出します。コマ割りや人物の位置、セリフをおおまかに入れたものですね。そこでまた編集さんに見ていただき、原稿の下書きをして再度編集さんに確認をし、ペン入れに入るという感じです。込み入った背景などはアシスタントさんに作業を振り、最後にセリフの位置などを確認して、編集さんに入稿するという流れです。

 

漫画家になるまでの経緯を教えてください。

小学生の時から漫画が好きで、自分が描いた落書きを褒められたりもしていたため、安易に漫画家を目指し始めました。中学2年生の時から自分が描いた漫画を雑誌に応募し始め、中学3年生の時に初めて賞をいただいて。しかしそこでは芽が出なかったのでゼロに戻ろうと思い、いろいろな雑誌に持ち込みにいったのですが、デビューには至らずでした。それから数年経ってデビューもしたのですが、全然ダメで。最初のデビューから10 年が経っていたので、一旦区切りをつけようと思い、商業誌は諦めて同人誌での活動がメインになりました。そんな感じで40 歳を超えてしまったので、漫画を仕事にすることは諦めつつも、最後に大きな作品を描いてみようと思い、父親のシベリア抑留を題材にした『凍りの掌』という作品の着手に至りました。その後、戦争を題材にした展示に原画展として参加した時に、昔知り合った編集者さんが「作品を出しませんか」と声をかけてくださって。そこで初めてストーリーものの作品を一冊出すことができました。さらにそれを持って文化庁メディア芸術祭に応募してみたら、新人賞をいただいて。展示に来られていた雑誌の編集長から声をかけていただき、次の連載が決まりました。その時は、母親が12 歳の時に経験した名古屋空襲を題材に『あとかたの街』という作品を描いたのですが、次は80 歳になった今の母親の年代の人を描きたいと想い、『傘寿まり子』という作品に取り掛かりました。その作品をテレビ番組で取り上げていただき、それをきっかけにより注目してもらう機会が増えた感じです。

 

漫画のストーリーはどのように考えられているのですか?

生きていく上で、表面上で見えているものの裏には、いろいろなドラマがあるのではないかと思っています。そのドラマを漫画にしたら面白のではないかということは常に考えていますね。80歳の作家が主人公の『傘寿まり子』という作品は、私の母がちょうど80代だったことから描こうと思ったものです。そういった形で、“こういう世界を描いたら面白いかな”というのは常に探していますね。私はもともとストーリーを考えるのが好きな方で、見えていない部分をいかにして炙り出すかみたいなことは、やっていてすごく楽しいです。だから、自分の作品の中で一人の人物を描く時も、“この人はこの時にこう思うのではないか”ということを想像しながら描いています。

 

仕事をする中でのやりがいを教えてください。

漫画家は家の中で仕事をしているので、外での評価がわからないんですよね。だけど、たまに声をかけていただくことがあって。例えば今は着物のお話を書いているのですが、着物のイベントに行った時に、「漫画を読んでいます」と声をかけてもらうことがあったりするんです。自分が知らない人が自分の作品を知ってくれているというのは本当に嬉しいですね。

 

おざわさんが思う漫画の魅力を教えてください。

本当にたくさんあるんですけど、今って漫画とかから知る情報ってすごく多いと思います。歴史的な人物や史実だったり、難しそうなものを知る入り口として、今は漫画というものあるので、それはすごく良いなと思います。歴史物や、私が描くような戦争物も、漫画にすると若い人でも読みやすかったりするので、それは漫画の魅力の一つだと思いますね。

 

漫画家を目指す高校生が、今からできることはありますか?

模写はある程度はやっておいた方がいいですかね。今はデジタルの時代で3Dでデッサンできるようにもなっていますが、ある程度絵に対して基礎があった方が、物語を描くことに集中できると思います。あとは自分が好きなものを突き詰めていってほしいです。自分が好きだと思った物を否定せずに、どんどん自分の中に取り入れていくことが大事かなと思います。

 

 

お仕事言葉辞典 漫画家 編

【プロット】 ぷろっと
ストーリーのあらすじや世界観、登場人物の設定や、エピソードなどをまとめたもの。小説や演劇、映画などでも使われ、制作に入る際、最初に行う作業となる。話を進める際に矛盾がないか等も、このプロットで確認することになる。

 

お仕事道具見せてください!

【インタビュー】漫画家 おざわ ゆき「自分が知らない人が自分の作品を知ってくれているというのが嬉しい」

“手書き派”漫画家の お仕事必需品
奥に見えるのは執筆中漫画のキャラクターイメージ。手前の人形は男性を描く際に骨格などを確認するためのもの。さらにGペンやスミ、消しゴム、定規などさまざまな道具を使って作品を生み出します。

 

INFORMATION

おざわさんの作品 『またのお越しを』
講談社『BE・LOVE』誌 にて連載中!

【インタビュー】漫画家 おざわ ゆき「自分が知らない人が自分の作品を知ってくれているというのが嬉しい」