全国の高校生の活動をお伝えする“全国高校生NEWS”。第30回は、長崎県立五島高等学校。五島市の空き家を再利用するために、空き家のPR動画を制作した、2年生女子6名で構成されるチーム『川さん班』に話を聞きました。
◆地元の問題を地元の魅力に変えるために
長崎県西部に位置する五島列島。11 の有人島と52 の無人島からなる五島市には1500戸以上の空き家が存在し、うち1000戸程度は適切な管理がされないまま放置され、問題視されています。五島市ではこの空き家を有効活用するために『空き家バンク』というサイトが設けられており、現在は285戸の空き家が登録されています。ここでは“海が近い”“庭・畑がある”などのテーマや、価格帯で絞って空き家を検索することができます。
そしてこの空き家に目をつけたのは、市内にある長崎県立五島高等学校の女子生徒6名で構成された『川さん班』。彼女たちは探究の授業のテーマに“空き家の再利用”を掲げました。現在、五島市では若者が減少傾向にある一方、五島市から都市部へ移住した人が再び五島市に戻ってくる“Uターン”、都市部出身の人が五島市に移住する“Iターン”をする人が増えているということを知り、空き家を活用できる方法を探すことにしたのです。
当初『川さん班』の6名は、空き家を利用したスタンプラリーを考案。しかし新型コロナウイルスの影響を受け、スタンプラリーは断念し、空き家を利用して生活したい人向けのPR動画を制作することにしました。
活動を始めるにあたり、まずはPR動画に使うことができる空き家を確保する必要があります。そこで五島市役所に電話をしたところ紹介してもらったのは、五島高校から徒歩で約20 分の場所にある築43 年の空き家。『川さん班』の6名は授業の時間を使い、空き家の周辺状況を見に行くことに。実際に空き家を尋ねると、最寄りのバス停からは徒歩で約5分、周辺にはスーパーや塾、美容院もあることが分かりました。班員の1人・野口さんは「実際に撮影していく中で、もし自分が空き家を利用したい側だったらこういう情報を提供してほしいと思った」と話します。その言葉の通り『川さん班』の6名は、周辺環境もアピールポイントになると考え、空き家のPR動画に周辺の情報も入れることにしました。
実際の撮影は休日を使って行い、周辺の情報は実際に歩きながら撮影。制作した動画には、班員の1人・川上さんがナレーションを入れ、空き家の外観・中の様子・周辺施設等をPRしていきました。ナレーションを担当した川上さんは、実際に空き家を訪れ印象が変わったそうで、「人が住める状態ではないと思っていたが、実際に見てみると大きなリフォームをしなくても住めることがわかった」と話してくれました。そしてこの制作した動画は、五島市など、さまざまなところで活用してもらえるよう掛け合っていくそうです。
近年では、宣伝効果から観光で島を訪れる人が増えている五島市。そして、今までの彼女たちにとって“存在を知ってはいる”程度だった、空き家の存在。そんな空き家は、Uターン・Iターンを考えている人を中心に注目されている存在でもあったのです。地元の高校生によって市内外に発信するために制作された動画は、使い手を求める家・住む場所を求める人をつなぐ架け橋となっていくのです。
長崎県五島市にある公立高校。令和2年度に創立120周年を迎えた、県内でも有数の伝統校です。島外の高校から島の高校に入学することができる“離島留学制度”実施校で、全国から『普通科スポーツコース』への生徒を募集しています。また、公立高校では数少ない准看護師資格試験の受験資格を3年間で取得できる『衛生看護科』を設置しています。