今を生きる人すべてにとって身近な存在でありながら、あまり知らない“オカネのハナシ”。高校生が分かりやすい視点から、税理士・水村先生が“オカネ”について教えます!
いきなりですが、円安が止まりません。これは最近の各国の政策や新型コロナウイルス・戦争の影響によるものです。「アメリカの長期利回り国債の金利上昇」や「日本銀行の指値オペ実施」といったニュースがありましたが、このあたりのニュースに触れつつ考えてみましょう。
まず、円安ドル高という現象をおさらいしてみましょう。円安ドル高というのは
1ドル=100円 ⇒ 1ドル=125円
のように同じ1ドルを手に入れるために必要な日本の円の量が増える現象を言います。なんだか、“100円⇒125円”のように円の金額が増えているのに円安という言葉がマッチしない感じがしますね。
今度は同じ現象で円を基準に考えてみましょう。
100円=1ドル ⇒ 100円=0.8ドル
このように、同じ100円でも手に入れることができるドルの量が減りますね。すなわち円の価値が20%下がっている(安くなっている)のがご理解いただけると思います。この原稿を書いている4月20日現在1ドル129.3円に到達しています。今年の1月が114円だったことを考えると129円はおよそ11.6%も価値が下がっていることを意味します。
ここで1ドルあたりの値動きのチャートを見てみましょう。
このように3月初旬を起点に急激に円安に転換しているのが、よくわかります。
アメリカは3月中旬に政策金利の利上げを発表しました。要するにお金を借りるときの利子の割合を国の方針として上げましょうということです。こうなると、アメリカ国内ではお金を貸す側がたくさん利子をもらえるようになり、アメリカという国が発行する国債の利子も上がります。すると世界の投資家は、「アメリカの国債を買えばたくさん利息が付くから買うべし!(利息がたくさんもらえるから、お金が増える)」という動きが広がります。
一方で日本では、逆に“指値オペ”という政策を実行しました。“指値オペ”とは“指値オペレーション”の略で、金融市場の需要と供給のバランスを操作するために一定の利率で国債を無制限に購入することを言います。
本来、需要が高くなれば値段が上がり、供給が多くなれば値段が下がるというのが原理です。“国債が欲しいという人”が多くなれば需要が増え、利率が下がります(たくさん利子をつけなくても国債を買ってくれる人が多いから)。日本銀行は“国債が欲しいという人”になるため、無制限に国債を買い入れることにより、利率の上昇をコントロールしようとしているのです。
なぜこのようなことを日本銀行が行うかというと、“日本に出回るお金の量を増やしたい”、すなわち金融緩和政策の継続です。日本では新型コロナウイルスが流行し始めたころ、政策として国が利子無しで会社にお金を貸すという手段をとってきました。これは新型コロナウイルスによって経済が止まり、日本国民がお金を稼ぐ手段を失ったためです。その後経済が徐々に回復し始め、営業しているお店も増えてきつつありますが、日本銀行はまだ経済の回復が不十分だと考え、金融緩和を継続する方針を示しました。利息が上がるとお金を借りる人が減るため、世の中のお金の量が減ることを避けたかったのでしょう。
こうしてみるとアメリカと日本は対照的です。経済の回復が十分に行われて利息を上げるアメリカと、回復が不十分と判断した日本。世界のお金の流れがアメリカにどんどん傾いていった結果、日本の円の価値が下がっていったと言えるでしょう。
今回は少し難しい内容でした。できるだけ平易な解説を心掛けた結果、説明が足りないところもあるかもしれません。経済は国や人の様々な思惑によって動きます。みなさんも国際社会の一員として世界経済を注視していただければと思います。