さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第57 回は、大阪府大阪市にある氷屋“野口商店”の店主・野口智也さん。全国に7人しかいない「氷屋マイスター・ゴールドクラス」の資格を持つ野口さんに迫ります。
大阪府出身。大阪府大阪市淀川区十三にある氷屋「野口商店」に生まれ、自身が24歳の時にかき氷屋を始める。2018年に「野口商店」の三代目店主となり、2021年には全国氷雪販売業生活衛生同業組合連合会が発行する「氷屋マイスター・ゴールドクラス」を獲得。全国に7人しかいない「氷屋マイスター・ゴールドクラス」取得者としてメディアなどにも多数出演し、氷の魅力を広めている。
氷は脇役じゃなくて主役だということを、もっと世間の人に知ってもらいたい
仕事内容を教えてください。
1本135kgの氷を仕入れて、お店で加工、その氷を梱包して飲食店などのお客様に配達をしています。日中は店先でかき氷の販売なども行っています。
家業を継がれる意識はいつ頃からあったのですか?
子供の頃から意識はありましたね。家業を継ぐということに疑問を持ったことも特にありませんでした。やりたいことがあったわけでもなく、当時ウチの店が住宅設備の仕事もしていたため、高校卒業後は電気工事系の専門学校に進学をして。その後はアルバイトをしながら、家では氷の配達を手伝ったりしていました。そして24歳くらいの時に、商店街にあったかき氷屋さんがなくなって。ウチには貸出用のかき氷の機械があったので、やってみようかなと思ってかき氷の販売を始めました。当時は近所の子供がよく来てくれていて、そこから26年経った今も当時の子たちは遊びに来てくれますね。今じゃその子たちも30代後半なので、自分の子供を連れて来てくれたりします。あとは口コミでお店のことが広まり、初めて来てくれるお客さんもたくさん増えました。
かき氷のこだわりがあれば教えてください。
“フワフワな食感”には、最初からこだわっています。フワフワにするためにはゆっくり削らないといけないので、普通のかき氷よりも時間はかかるのですが、そこは譲れない部分ですね。氷自体も一般的には48時間かけて作られるものが多いのですが、ウチで使っている氷は72時間かけて作っているものだったりします。あとこだわりとしては、昔ながらのシロップを使うこと。“お祭りで食べるシロップと同じなのに美味しい”と思ってもらえることが嬉しいんですよね。そもそも僕たち氷屋が扱っているような“純氷”と言われる氷って、雑味がなくてどこまでも透明なんです。氷は脇役じゃなくて主役だということを、もっと世間の人に知ってもらいたいですね。
氷屋マイスターゴールドクラスを取られたきっかけを教えてください。
“氷屋マイスター”は氷屋の知識や技能を証明するもので数年前に誕生した制度なのですが、新しいもの好きな僕は速攻その話に食いつきました(笑)。僕はそれまで、氷に対する知識は親父や他の氷屋さんから聞くくらいのものしかなかったのですが、“氷屋マイスター”の試験を受けたことで初めて、氷についてしっかりと知ることができました。僕は最初の試験で氷屋マイスターゴールドを取ることができたのですが、当時は東京に1人、大阪に僕1人の計2名だけだったんです。だからメディアからも注目していただき、テレビや新聞の取材も増えたので、お店もすごく忙しくなりました。やっぱり“氷屋マイスターゴールドを持っている氷屋”と言えるのは、ウチの強みでもあると思っています。
仕事をする中でのやりがいを教えてください。
やっぱり「お兄ちゃんのところの氷美味しいわ」とか「コンビニで買うものとは違うわ」とかって言ってもらえた時ですかね。あとはかき氷っていう部分で言うと、初めて来たお客さんが一口食べた時に「え〜!」とかって驚いたリアクションをしてくたりして。子供とかも「めっちゃ美味しい!」って言いながら食べてくれるので、そういう時はモチベーションが上がりますね。心の中で「そうやろ〜!」って思っています(笑)。
家業を継ぐ高校生にアドバイスをお願いします。
家の仕事は保険くらいに考えた方がいいですかね。何かやってダメだった時には家の仕事があるんだから、他に何かやりたことがあったらやれば良いと思います。あんまり難しく考えず、常に頭を柔らかくして考えた方がいいと僕は思いますね。だから“継ぐためにアレをせんとあかん”みたいな考えは持たずに、“どこもなかったら家でええやん”くらいの軽い気持ちで。保険だと思って、その時に自分がやりたいことをやればいいと思います。
高校生にメッセージをお願いします。
後ろを振り返ってウジウジせず、常に前向きな気持ちでいってほしいです。大人になって過去を振り返ると、高校生の時の悩みなんて本当にちっぽけやったなって思います。だからつらかったり嫌なことがあってもあまり考えすぎず、常に前を向いて頑張ってください。
お仕事言葉辞典 氷屋 編
【氷屋純氷】 こおりやじゅんぴょう
時間をかけて作られる“アイス缶製氷”という方法で製氷される氷のこと。約-10℃で48時間以上かけてゆっくり凍らせることで、空気や不純物が取り除かれる。全国氷雪販売業生活衛生同業組合連合会(全氷連)が定めた氷屋は、販売する氷に“氷屋純氷”と銘打つことができる。
お仕事道具見せてください!
手鉤、アイスカッター
写真手前は、重い氷を移動する際に欠かせない“手鉤”という道具。奥に写っている氷を切断する“アイスカッター”は25年前から使用しており、野口さんは中学生の時に初めて使わせてもらったそう。
INFORMATION
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