気象キャスター 向笠康二郎「気象キャスターは適切に危険を伝えることで、人の命を守れる可能性がある」

台風や秋雨前線など天気が変わりやすい9月。第88回のWorker’s fileでは、気象キャスターの向笠康二郎さんにインタビュー! 向笠さんが気象キャスターを志したきっかけをはじめ、9月の天気で気を付けるべきポイントなどをお聞きしました。

気象キャスター 向笠康二郎「気象キャスターは適切に危険を伝えることで、人の命を守れる可能性がある」

向笠康二郎(むかさ こうじろう)
神奈川県出身。オフィス気象キャスター株式会社所属。大学在学中に気象予報士資格を取得。大学卒業後はシステムエンジニアとして勤務していたが、夢だった気象キャスターを目指すために転職。原稿制作業務等の下積みを経て、NHK水戸放送局の気象情報を担当。2021年春からNHK放送センター(東京)の気象情報を担当している。

 

◆気象キャスターは適切に危険を伝えることで、人の命を守れる可能性がある

仕事内容を教えてください。

気象予報士資格を活かし、テレビやラジオで気象キャスターとして天気を伝えています。現在は、NHKの『ニュース7』で天気予報を担当していますが、台風や大雨の際には、局に残り臨時で大雨解説や台風解説をすることもあります。地方局の気象キャスターをしていた時は、天気予報で使用する画面の準備も自分で行っていました。当時は毎回美術スタッフさんに案を出して画面を作成してもらい、原稿を用意して、掛け合いをするアナウンサーさんとの打ち合わせなど、放送本番までの業務は多岐に渡っていました。

現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。

大学時代に気象予報士資格を取得しましたが、卒業後は天気と関係のないシステムエンジニアとして勤めていました。新社会人1年目が終わった時に大学時代の友人と今後について考えてみようとなり、目標を決めることになったんです。私自身、システムエンジニアの仕事も楽しかったのですが、定年まで働くことを考えた時に、憧れだった“気象キャスター”になることが諦めきれなかったんです。当時26歳だったので、30歳までの4年間で気象キャスターを目指してみようかなというざっくりとした目標を立てました。そうしたらその友達に「じゃあ今年は何やる?」と聞かれて、気象キャスター講座を何月に受けるとか、気象予報士としての名刺を一か月以内に作るなど、具体的なスケジュールを立てられて。具体的な目標とスケジュールを立てたことでその通りに進み、気象キャスター講座を受けた時に現在の会社の社長に声をかけていただきました。それをきっかけに、システムエンジニアを辞めて、2年間は下積みとしてテレビやラジオの天気原稿を書く仕事をしました。その後、オーディションを受けて、茨城県のNHK水戸放送局の気象キャスターを6年間担当。さらに東京のNHK放送センターのオーディションを受け、現在はNHK放送センターで気象キャスターをしています。

気象予報士資格を取得したきっかけを教えてください。

今は好きではないんですけど、もともと台風が好きだったんです(笑)。台風が来ると、親の仕事や学校が休みになり、ちょっとした非日常を味わえるのが好きで気象に興味を持つようになりました。中学生くらいまでは、毎日NHKの天気予報をチェックしていたんです。その理由が、NHKは雲の様子をほぼ毎回放送していて、それを見ていると“台風ができそうだな”というのをいち早く知ることができたからなんです。天気予報を見ているうちに、いつか自分も伝える側になってみたいなと憧れの一つとして思い始めたのが気象予報士資格を取ろうと思ったきっかけです。

気象予報士資格を取得してよかったことを教えてください。

自分の見解で天気を見通せるようになったことです。例えば、旅行に行く時は天気を前提にコースを予め決められます。そのため、雨を想定して行程を組めるので凹まずに済みますね(笑)。テレビで伝えられている天気予報もありますが、自分でデータを見て判断できるため、自分なりに予想を立てて、生活や遊びに役立てられることがメリットかなと思います。

仕事をする中でのやりがいを教えてください。

気象キャスターとして使命を全うするべき場面とは、災害が起こっている、起こるかもしれない時に、どういう解説ができるかだと思っています。そのため気象キャスターの仕事のやりがいは、適切に危険を伝えることで、人の命を守れる可能性があるところだと考えます。そしてもう一つのやりがいは、伝えたことに対して次の日の天気で答え合わせができるところです。“こういう伝え方があったな”、“こういう風に伝えておいてよかったな”など、自分の見解と照らし合わせて答え合わせができ、仕事に対して成果が早く表れるところがおもしろいです。また、局内からも「今日の話がおもしろかった」や「わかりにくかった」などの反応があり日々反省できる環境です。一日で完結していて、反応が早く返ってくるためモチベーションにもつながっています。

気象予報士に繁忙期はありますか?

多くの気象キャスターは、基本的に決まった番組の決まった時刻に番組に出演するため、あまり残業がなく、定時に帰れると思います。一方で、地域によっては梅雨時期から台風、雪のシーズンは繁忙期になります。その時は、普段の天気予報コーナー以外にも、ニュースとして大雨の解説や、夜残って臨時のニュース解説をすることもあります。

9月の天気で気を付けたほうがいいことはありますか?

最近は9月になり一旦暑さが和らいでも、また急に暑くなることがあります。そんな時は、熱中症にかかりやすいので注意してください。また、台風と秋雨前線がセットになることで大雨になり災害が発生してしまうこともあるので、地域によっては注意する必要があります。

気象予報士資格のない方が空を見てわかることはありますか?具体的にこういう空になったら注意した方がいいという事例はありますか?

晴れていて日差しが強くても、モクモクとした雲が多い時は注意した方がいいです。そんな時は空気中の水分が多いので、このあと激しい雨や雷が起きるかもなという予想を立てることができます。なので、晴れていても雲の様子を見るのがおすすめです。よくニュースで「ゲリラ豪雨」という言葉を聞くと思いますが、レーダーを見るとだいたい事前にわかることが多いんです。今はスマホがあるので、雨雲レーダーで雲の動く方向をチェックすると不意の雷雨に濡れることは減らせると思います。

気象キャスターになりたい高校生にメッセージをお願いします。

天気を伝える上で一番大事なことは、自分が天気を好きで天気を楽しみ、その楽しさをみなさんに伝えることです。気象キャスターは、気象庁が出した予報を伝えるだけでなく、自分の言葉として伝えられる力も大切になってきます。同じ道を目指す人がいるのなら、空を見る、空気の違いを感じる、風を感じるような日々を過ごしていれば、自分の伝える言葉に深みが出てくると思います。

お仕事言葉辞典 気象キャスター編

【尺調】 しゃくちょう
決められた時間にコーナーの長さを合わせること。番組を成立させるために、他のコーナーの伸び縮みを天気予報で調整することが多い。例えば、本来3分あった天気予報の時間が、直前で大幅に短く変更されることもある。

お仕事道具見せてください

気象キャスター 向笠康二郎「気象キャスターは適切に危険を伝えることで、人の命を守れる可能性がある」
指し棒、天気図
先端がタッチパネルに反応するようになっており、画面を入れ替えることができる指し棒は、解説している部分を視覚的にわかりやすくします。天気図は、地上付近だけでなく上空の大気の状態も理解して予報の作成に役立てているそうです。

 

INFORMATION

\向笠さんが所属する 『オフィス気象キャスター株式会社』では気象キャスターによる講演会を実施中!/
気象キャスター 向笠康二郎「気象キャスターは適切に危険を伝えることで、人の命を守れる可能性がある」

公式サイト
https://www.office-weather.jp