愛媛県立松山南高等学校 自然科学部「視覚障がいのある人が触ってイメージしやすいような形にすることにこだわった」

第72回の“全国高校生NEWS”は、視覚障がいのある学生に、実際の松山城をイメージしてほしいという想いから、3Dプリンターで松山城のジオラマを製作した愛媛県立松山南高等学校自然科学部を紹介します。

愛媛県立松山南高等学校 自然科学部「視覚障がいのある人が触ってイメージしやすいような形にすることにこだわった」

◆手で触って松山城を想像する
視覚障がいの学生のためのジオラマ

愛媛県立松山南高等学校の自然科学部が、約半年かけて松山城のジオラマを製作しました。この取り組みは、特別支援学校の修学旅行での学習支援に力を入れている松山市が、“視覚障がいのある学生にジオラマを触って立体的な松山城をイメージしてほしい”という想いで、科学を活かした研究や地域課題の解決に取り組んでおり、日頃から3Dプリンターを活用している松山南高校へ依頼したものです。

自然科学部は、部活動で必要なものを3Dプリンターで製作していましたが、本格的なジオラマ製作は松山城が初めてだったそう。はじめに、地図アプリに出てくる松山城の3Dデータをもとに、3Dプリンターで印刷用のデータを作成しました。その後、データの修正を重ね、完成したデータを3Dプリンターで印刷。松山城のジオラマは縦横約30cmと大きく、約30のパーツに分けて印刷し、木工用ボンドで組み立てました。

ジオラマ製作をする際にこだわったポイントは「3Dで印刷しやすい形にすること」と「視覚障がいのある人が触ってイメージしやすいような形にすること」の2つ。松山城は山の上にあり、連立式天守を中心とする本壇と呼ばれる区域が特徴的です。「屋根部分もパーツを分けてボンドで接着させているのですが、接着させる時に建物同士が干渉しないようにあらかじめデータ上で削っておくのが大変だった」とデータ作りを担当した越智光太郎くん(3年)は振り返りました。

越智くんが作成したデータから印刷されたパーツを組み立てたのは同じく3年の村川鼓太郎くん。触っている最中にパーツが取れないように接着させることを意識しながら組み立てました。そして、完成したジオラマを、実際に盲学校の生徒に触ってもらう意見交換会を実施。喜んでくれる声が多い一方で、改善点も挙げられました。その中で村川くんが最も苦労したのが“石垣を再現してほしい”という声。3Dプリンターで石垣の溝を作るのは、データ上難しく、一面一面手で掘ることにしました。「石垣も松山城の特徴の一つなので、メンバーに下書きを描いてもらい、それをもとに3日かけて手で一つひとつ掘った」と村川くん。それ以外にも、東西南北を示す点字をつけたりと、実際の声をもとに改良をしました。その後、今年3月に松山城のジオラマが完成。実際に修学旅行で松山城に訪れた盲学校の学生にジオラマを貸し出し、学生からも高く評価されています。

そして今年度は、第2弾のジオラマとして愛媛県を象徴する“ある建物”を作成中! データ作りを担当している水本知希くん(2年)は「今回の建物は、構造がとても難しい。根気強く改良を重ねて、“これが、愛媛県が誇る建物だ”というものを触ってイメージしてもらえるように完成させたい」と意気込みを語りました。

愛媛県立松山南高等学校 自然科学部「視覚障がいのある人が触ってイメージしやすいような形にすることにこだわった」▲完成した松山城。特徴的な連立式天守や屋根の重なり、一面一面手で掘った石垣など、自然科学部と盲学校の生徒たちのこだわりが詰まった作品です。
愛媛県立松山南高等学校 自然科学部「視覚障がいのある人が触ってイメージしやすいような形にすることにこだわった」▲学校で行われた意見交換会での触察の様子。意見交換会での感触は良かったものの、アドバイスや改善点なども多く挙げられました。
愛媛県立松山南高等学校 自然科学部「視覚障がいのある人が触ってイメージしやすいような形にすることにこだわった」▲意見交換会で、完成した松山城を盲学校の生徒にお披露目した時の様子。今後は視覚障がいのある学生たちに貸し出し、松山城への興味関心を高めてもらうために活用されます。
愛媛県立松山南高等学校
愛媛県松山市にある公立学校。文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに指定されている進学校です。普通科と理数科を設置し、各教科において文系・理系にとらわれない「自律的な学び」やデータを利活用した課題研究・STEAM教育を推進しています。自ら課題を発見・解決し、新しい社会に対して価値を創造することができる生徒を育成しています。