【インタビュー】中嶋イッキュウ「今思えば、軽音学部での経験は、自分のいいところを教えてもらって、相手のいいところも見つけられるとても恵まれた環境でした」

3月5日にリリースされる中嶋イッキュウさんの『Our last step』が、映画『早乙女カナコの場合は』の主題歌に決定! 今回YTJPでは、楽曲の注目ポイントや、楽曲制作についてインタビューを実施。また、高校生の時に歌手という夢への第一歩を踏み出した中嶋さんから、現役の高校生へのメッセージも! 今注目のアーティスト・中嶋イッキュウさんに迫ります。

【インタビュー】中嶋イッキュウ

中嶋イッキュウ(なかじま いっきゅう)
2010年に4人組バンド・tricotを結成。ギターボーカルを担当し、作詞作曲も手がける。ソロとして楽曲提供なども行い、2017年からはジェニーハイのボーカルとしても活動。3月5日にリリースされる『Our last step』が3月14日公開の映画『早乙女カナコの場合は』の主題歌に決定するなど、幅広く活動中。

-—3月5日にリリースされる『Our last step』はどういった楽曲ですか?
この曲は、映画『早乙女カナコの場合は』のために書き下ろした楽曲です。私が映画を初めて観た時に感じた心境や心の動きを曲にしました。曲の雰囲気としてはバラードなのですが、音に注目して聴いてもらうとギターがしっかりと鳴っていたり、ロックを感じる曲調になっていて。ベースやドラムも、ロックミュージシャンの中から勢いのある演奏をする方々に声をかけさせていただきました。歌詞に関しては、私は普段の楽曲から曲の中で実体験を描いていなくて。今回は“早乙女カナコ”という主人公に寄り添って作りました。

-—映画の主題歌を担当することが決まった時の感想を教えてください。
アニメ作品のタイアップは経験があるのですが、映画のタイアップは初めてだったので、すごく嬉しかったです。tricotの中嶋イッキュウとして作る楽曲は、変拍子を入れたりするのでアニメの方がハマったりするのですが、2024年からソロ活動を始めて自由に自分で曲を作れる環境になったので、今回のような映画タイアップのお話をいただけたのかなと。ソロ活動を始めてよかったなと思いました。映画などメッセージ性が強いもののタイアップとしては、歌詞や曲がしっかりと立つ楽曲が合うのかなと、改めて気づくことができましたね。

-—『Our last step』で特に注目してほしい部分はどこですか。
映画の主人公・カナコの彼氏の長津田さんはいわゆる夢追い人なんです。夢を追う彼を認めたい気持ちはありつつも、その彼に流されずにしっかりと自分を持っているというのが、カナコの魅力的な部分だと思っています。物語の中の、“付き合う・付き合わない”や、“そもそもこの二人の相性は合っているのか”という部分も恋愛ならではの面白いところなんじゃないでしょうか。また映画の中には、カナコ以外にも女性の登場人物が何人かいて、みんな違うスタイルの恋愛をしているんです。全員にちょっとずつ共感できる部分があり、“自分だったらそういう行動はしないけれど、気持ちはわかるな……”みたいな、そういう面白さもあったので、特に女性には響きそうな作品だと思いました。ハッピーエンドとは言えないけれど悪くもない、というような絶妙なバランスの関係にもこだわって『Our last step』作ったので、ストーリーとあわせて楽しんでもらいたいです。

-—タイアップ曲を制作する時と、ご自身の楽曲を制作する際の違いはありますか?
自分で自由に楽曲を作る時はストーリーがなくて、作り進めていくうちに“これってこういうことなのかな”って気づいていく感じなんです。一方タイアップ曲を作る際は、もともとあるストーリーから自分が感じた部分を音と言葉で表現するので、順番が違うというか……。どんどん出来上がっていくものと、出来上がっているものからアイデアをもらっていく作業という制作の違いはありますね。自分の楽曲に対してよく言われるのはメロディーがポップでわかりやすい、ということです。これは意識して作っているわけではなくて、自分がこれまでに聴いてきた楽曲から影響を受けている部分が関係していると思います。『Our last step』を制作する際も、監督から声をかけていただいた段階で“自分らしく”という話をしていただいていたんです。自分自身を振り返るわけでもなく、思うがままにメロディーを作った結果、自分らしさが出たのかなと思います。

-—中嶋さんが音楽を始めたきっかけを教えてください。
小さい頃から音楽が好きだったんです。物心ついた頃から定期的に将来の夢を書くタイミングがあったのですが、卒園アルバムに“歌手になりたい”と書いていたくらい、歌手に憧れを持っていましたね。本格的に音楽を始めたのは高校で軽音学部に入部してからです。私の出身高校は軽音学部がとても有名で、“軽音楽部に入りたい”という同級生がたくさんいました。当時の軽音学部は、1ヶ月に1回あるオーディションに受からないと入部できなくて、1回目のオーディションで受かることはまずないという状況で。私は「これが受からなかったらもう入れない」というラストチャンスで受かり、なんとか軽音学部に入部することができました。そんな中、必ず落とされるという1回目のオーディションで合格した伝説のギタリストの先輩がいて。それが今tricotで一緒に活動しているギターのキダさんなんです(笑)。一方、私はラストチャンスでお情けで入部させてもらった感じで……。軽音学部に入ったことによって自分の実力を知り、下手なんだということに気づきました。それからはアルバイトでお金を貯めて、毎週ボイトレに通っていましたね。軽音学部内で毎月ライブがあったので、みんなに歌を聴いてもらえる機会が多く、その度に先輩に「うまくなったね」と言われて如実にボイトレの成果を感じられたので、頑張ることができました。

-—当時影響を受けたアーティストはいますか?
キダさんが高校生の時に椎名林檎さんのコピーバンドをやっていて、そのライブを観て椎名林檎さんにハマって聴いていました。当時はThe Beatlesなど洋楽も教えてもらって聴いていましたし、メタリカなど、メタルバンドのコピーバンドもやっていました。

-—普段はどういった時に楽曲が思い浮かぶのですか?
お風呂に入っている時や、散歩している時などに思い浮かぶことが多いですね。他のアーティストさんでも「入浴中や散歩をしている時に思いついた」という方がいると思うのですが、おそらく血が巡って脳が活性化されているんでしょうね(笑)。私の場合も、パソコンに向かって“やるぞ!”と意気込んでいる時ほどアイディアは出てこなかったりします。思い浮かんだ歌詞やメロディーはすぐにスマホに記録したいのですが、散歩中など場所によっては恥ずかしいこともあって(笑)。人が歩いていて堂々と録音するのが恥ずかしい時は、電話しているフリをして、後で聴いた時にギリギリわかるくらいの小さい声で録音したりしています。

-—高校生へメッセージをお願いします。
私は自分が入りたいと思っていた高校に入ったわけではなく、友人に誘われてどんな学校かも知らずに軽い気持ちで入学して。そこでたまたま出会った軽音楽部が、ずっと憧れていた歌手に近づくきっかけになりました。どんな環境にいても、勉強が好きな方は勉強を頑張るだろうし、スポーツが好きな方はスポーツを頑張るはず。私は音楽に出会って、音楽が好きだったから頑張ることができました。今思えば、軽音学部での経験は、仲間と助け合い、自分のいいところを教えてもらって、相手のいいところも見つけられるとても恵まれた環境でした。高校生のみなさんにも、自分の得意なところを、好きなところを伸ばしていってほしいなと思います。

INFORMATION

中嶋さんが歌う『Our last step』が主題歌を務める
映画『早乙女カナコの場合は』は3月14日に全国公開!

【インタビュー】中嶋イッキュウ
(C)2015 柚木麻子/祥伝社
(C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
◆公式HP
https://www.saotomekanako-movie.com
◆公式X
https://x.com/wands_movie