ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギターで、小説やエッセイの執筆活動も注目される尾崎世界観。その2020年に芥川賞候補になった話題の中編小説『母影』(おもかげ)が、いよいよ新潮文庫に登場する。
文庫版には、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹による解説を収録。芥川賞作家でもある又吉が熱く綴った約7000字の大作となっている!(新潮文庫 8月新刊/7月28日発売)
〈となりのベッドで、またお母さんが知らないおじさんをマッサージして直してる。〉
〈私はいつも手前のベッドにもぐりこんで、カーテンだけを見てる。〉
〈私はわかった。二人はカーテンの向こうで恥ずかしいことをしてる。〉
小学生の「私」の視点で、マッサージ店で働く母の秘密と社会の歪(いびつ)を見つめた、尾崎世界観の中編小説『母影』。2020年に純文学文芸誌「新潮」12月号に掲載後、芥川賞候補に選ばれ、翌年1月に書籍刊行されるや続々重版も果たした話題作。
そして今夏、満を持しての文庫化では、尾崎の強い希望で又吉直樹に解説をオファー。依頼を受けた又吉は、『母影』に全身で向き合い、熱のこもった約7000字の大作解説を寄稿した。
その一部を紹介すると、
〈『母影』は、冒頭から結末に至るまで、神経の行き届いた言葉が丁寧に重ねられていく。
言葉を最大限に駆使し、純文学を書く、ということから一切逃げていない。
このような無垢な覚悟を感じさせてくれるものだけに触れて私は死んでいきたい。〉
(又吉直樹さん『母影』解説より)
尾崎が受け取った又吉からの熱烈な“エール”、是非文庫で物語と共に楽しんでほしい。
『母影』文庫版は全国の書店、各ネット書店にて予約受付中です!
◾️書籍内容紹介
小学校で独りぼっちの「私」の居場所は、母が勤めるマッサージ店だった。「ここ、あるんでしょ?」「ありますよ」電気を消し、隣のベッドで客の“探し物”を手伝う母。カーテン越しに揺れる影は、いつも苦し気だ。母は、ご飯を作る手で、帰り道につなぐ手で、私の体を洗う手で、何か変なことをしている――。少女の純然たる目で母の秘密と世界の歪(いびつ)を鋭く見つめる、鮮烈な中編。第164回芥川賞候補作。
◾️著者紹介
尾崎 世界観/おざき・せかいかん
1984(昭和59)年、東京都生まれ。2001(平成13)年結成のロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギター。’12年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。’16年、初小説『祐介』を上梓し話題となり、’20(令和2)年には「母影」で芥川賞候補となる。エッセイに『苦汁100%』『苦汁200%』『泣きたくなるほど嬉しい日々に』、直木賞作家の千早茜との共作小説に『犬も食わない』、対談集に『身のある話と、歯に詰まるワタシ』、歌詞集に『私語と』などがある。2023年現在、読売新聞読書委員、NHK Eテレ「NHK短歌」第3・第4週MC。
◾️書籍データ
・タイトル:母影(おもかげ)
・著者名:尾崎世界観
・発売日:7月28日
・造本:新潮文庫
・定価:605円(税込)
・ISBN:978‐4‐10‐104452‐1
・URL:https://www.shinchosha.co.jp/book/104452/