世界中でAIの開発が進んでいる中、日本は「AI後進国」と呼ばれています。今回は、データベース研究者である武蔵野大学データサイエンス研究科の林康弘准教授にAIを学ぶ重要性について聞きました。
武蔵野大学データサイエンス学部/データサイエンス研究科准教授。武蔵野大学アジアAI研究所研究員。慶應義塾大学SFC上席所員。博士(政策・メディア)。
ロールプレイングゲーム(RPG)で進行に邪魔なキャラクターがいたこと
私が小学生の頃に、プログラムの設計図となるソースコードが書かれている有名なパソコンの雑誌がありました。その雑誌に掲載されていたソースコードを打ち込んでゲームを作ったのがコンピューターに興味を持ったきっかけです。当時、親の仕事の関係で自宅にパソコンがあり、パソコンは自分にとって身近な存在でした。そして本格的にAIに興味を持つきっかけとなったのは、ロールプレイングゲーム(RPG)です。例えば、村においてプレイヤー以外に村人がいるとします。村人が動かないと不自然ですし、プレイヤーの動きに合わせて避ける動作が必要になります。そういうのも全てプログラムにアルゴリズムが書いてあり、古典的ではありますが人工知能の一つです。ゲームのキャラクターが人間のように振る舞ったりするには賢い計算が必要になってくると理解した時に人工知能はおもしろいんだなと意識するようになりました。
大量にある情報を整理したデータベースからの「採掘作業」
大量にある情報を整理したデータベースから有意義な知識を得ることをデータマイニングと言います。マイニングとは「採掘」という意味で、鉱山から知識という鉱物を掘り当てるようなイメージです。大学では、そのデータマイニングの研究をしています。例えば、eラーニングだと、オンラインで勉強した裏側には誰とどのようなやりとりをしたのかという記録が残るんです。そういうたくさんの履歴データを掘り下げ多くの人にとって有意義になるような情報、知識、パターンや傾向を引きだすことが可能になって。データを用いると次の予測ができたり、今までわからなかった癖がわかるなど、効率性や効果を高めるのに繋げていけることができるようになります。
データから仮説を立ててどういった遊びを生み出せるか想像力を働かすこ
ビッグデータとは、文字通りたくさんのデータのことをいいます。たくさんのデータというだけなのでビッグデータ自体におもしろさはないです。そこで大事になってくるのがビッグデータを使って何をするのかということ。データを見て自分なりに仮説を立てて想像することがなによりのおもしろさだと思います。例えば、目の前にトランプがあって、このトランプを使った遊び自体を考えるような感じです。どういった遊びを生み出すのか想像力を働かせるのが大事になります。
人間っぽい振る舞いをするプログラム
人間っぽい振る舞いをするように作ってある「ちょっと賢いプログラム」です。AIは複雑に捉えられがちだと思いますが、基本はコンピューターのプログラムでしかありません。
課題が山積みなのが現状だと感じている
極めて遅れていると感じています。アメリカでは2014年に当時のオバマ大統領が“Hour of Code”というイベントで、国をあげてプログラミング教育の必要性を語っていました。そこで言っていたのが「購買するだけではなく、自分で作ってみてください」ということです。きっと、ゲームをしていて “自分だったらこのキャラはこうがいいな”と思ったことがある人はいると思います。コンピューターにはそれを叶える可能性があるんです。そんな中、日本では昨年から「情報Ⅰ」が共通必履修科目となりましたが、教えられる人材に限りがあるなど、課題が山積みなのが現状だと感じています。
大量にある情報を整理したデータベースからの「採掘作業」
日本の教育では、情報科目=Word、Excel、PowerPointという思考から抜けきれていないように感じます。コンピューターは、動画編集や、作曲、文章を書くなど、人間の想像力に基づいた活動を支援し強化する機械です。コンピューターの活用方法を知る手段はたくさんあり、そこにアクセスするポイントもたくさんあります。それに気づき、おもしろいと思って自分で動くか、動かないかがユーザーからクリエイターに変わる別れ道だと思います。自分の時間をゲームやモノに搾取される側にまわるか、自分で作ることで搾取する側にまわるか、そのことに気づくことこそ重要だと考えています。
ゲームやモノに時間を搾取されないため
日本の教育では、情報科目=Word、Excel、PowerPointという思考から抜けきれていないように感じます。コンピューターは、動画編集や、作曲、文章を書くなど、人間の想像力に基づいた活動を支援し強化する機械です。コンピューターの活用方法を知る手段はたくさんあり、そこにアクセスするポイントもたくさんあります。それに気づき、おもしろいと思って自分で動くか、動かないかがユーザーからクリエイターに変わる別れ道だと思います。自分の時間をゲームやモノに搾取される側にまわるか、自分で作ることで搾取する側にまわるか、そのことに気づくことこそ重要だと考えています。
高校生の学びをサポートする新しい枠組みに共感したから
AIやデータサイエンス、ロボットなどに興味を持つ高校生に民間企業、教育関係者がそれぞれの立場を超えて、高校生の学びをサポートする新しい枠組みに共感したからです。
一度しかない人生を幸せに豊かに生きるために、AIが使われる機会が増えてることが理想
AIはこれまでに何度も期待され、失望される波がありました。しかし今は、イノベーションの時期にあると思っています。今後AIが人間の脳と同レベルに近づいていくにつれ、一人ひとりが一度しかない人生を幸せに豊かに生きるために、AIが使われる機会が増えてくることが私の理想です。
インターネットやAI、ビッグデータはアクセスがしやすくなりました。それは自分の可能性を広げるチャンスでもあるんです。自分の人生を変えていけるチャンスが増えてきているのだから、ぜひチャレンジしてみてほしいです。そして、他人との類似性ではなく違いを探してください。それには物事を“俯瞰的”に見る癖をつけるのが大事です。そうすると自ずと何が良くて、何が悪いのかという違いが見えてきます。その違いを伸ばすか伸ばさないかが人生の分かれ目だと思います。私たちが行っている「シンギュラプロジェクト」は、AIに興味のある若者を発掘して育成する場です。ぜひ、自分の可能性を広げたいと思っている皆さんに参加してほしいです。—先生にメッセージ
昨年から「情報Ⅰ」が共通必履修科目となりましたが、ご自身がAIを知らない、学んでいないから教えられないという方が多いのではないでしょうか?しかし世の中には学ぶ方法がたくさんあり、先生が学べる機会もたくさんあります。ぜひ一緒に“学びたい”と思っている高校生の背中を押し、応援してあげてほしいです。
林康弘准教授も参画している、日本の若きエンジニアを発掘・育成する「シンギュラプロジェクト」では総合的なAIやICTスキルを磨く高校生たちの頂点を決める選手権大会『シンギュラリティバトルクエスト』を開催。4回目となる今大会は、2023年9月2日(土)〜2024年3月31日(日)に渡って行われる。全国8ブロックの代表チームが決勝大会に進み、日本のITエンジニア界のヒーローを目指す。
AIは新しい時代の言語。それを学ぶことで、未来との対話が始まる。
デジタルリテラシーの核心。ホワイトハッカーになるのは自分だけのためじゃない。
データベースの研究者、それがデータサイエンティスト。
ロボティクスは、人間の可能性を拡張するアート。
ユーザーの心の中を旅する。それがUI/UXデザイナーの役割。
シンギュラリティバトルクエスト2023
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