【インタビュー】番組プロデューサー 小杉康夫「自分の思いを表現できる場所にいれて、僕は本当に出会いに恵まれていたんだな」

さまざまな職業で活躍する人に迫るWorker’s file。第79回は、株式会社TBSスパークルでドキュメンタリー番組のプロデューサーをしている小杉康夫さん。学生時代の出来事をきっかけにテレビ業界に入った小杉さんに迫ります。

【インタビュー】番組プロデューサー 小杉康夫「自分の思いを表現できる場所にいれて、僕は本当に出会いに恵まれていたんだな」

小杉康夫(こすぎ やすお)
東京都出身。高校卒業後、東放学園専門学校で2年間テレビの専門知識を学び、制作会社に入社。その後、フリーランスを経験し、2018年か株式会社TBSスパークル所属となる。主な担当作は、『ガイアの夜明け』、『カンブリア宮殿』などがある。

 

◆自分の思いを表現できる場所にいれて、僕は本当に出会いに恵まれていたんだな

仕事内容を教えてください。

プロデューサーは基本的に、お金の管理やキャスティング、作家やディレクターと一緒に企画を出して番組を取ってくるのが仕事です。僕は主にドキュメンタリー番組を中心に制作しており、担当した番組名で言いますと、テレビ東京系の『ガイアの夜明け』、『カンブリア宮殿』などがあります。

 

現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。

父親の知り合いにドラマ監督がいて、中学生の時に現場に見学に行ってたんです。当時はテレビ業界に興味はなかったのですが、スタッフさんが100人くらいの現場で監督が指揮をとっている姿がかっこよかったのを覚えています。高校時代はバイクに夢中だったんですけど、高3の6月に事故で親友を亡くして……。親友を失った喪失感やバイクへの恐怖を感じ、しばらく立ち直れませんでした。しかし同時に、これからの生きる意味や、何かしなきゃいけないっていうのを真剣に考えるようになって。その時にドラマ監督の存在を思い出しテレビ業界に進もうと決意しました。新卒で制作会社に入社して、働きながら出会ったTBSのプロデューサーの勧めもあり23歳の時にフリーに転身。2018年から今の会社でドキュメンタリー番組のプロデューサーをしています。

 

テレビ業界には専門学校を卒業して入る人が多いのでしょうか?

放送局の人は、4年生大学を卒業した人たちが多いと思います。しかし、制作会社は今となっては、すごい大学を出た人たちもいれば専門の人もいるし、高卒の人もいます。入るのが難しいかと言うと、番組や会社を選ばなければ、入るのが難しくないのがこの業界です。その反面、競争は激しくて淘汰されていくので、どの番組に配属されてもある程度のスキルを発揮することが求められます。自分の強みを理解して発揮できる人は、いつか自分を引き上げてくれるいい出会いがあると思います。

 

フリーに転身することに不安はありませんでしたか?

不思議と怖くなくて、そこには野心や根拠のない自信があったんだと思います。制作会社の時は、付き合いでスポーツ選手と食事に行くことがあったんですが、ついていけない時があったんです。飲み歩いたり、遊んだり、持ち物含めて、本気で楽しめていない自分がいて。このレベルに合わせていくためにも、自分はもっと稼がなきゃいけないと焦りました。フリーになったら、周りの方に恵まれてたくさん仕事をいただけるようになり給料が3倍近く上がって、一気に生活が変わったんです。僕は本当に出会いに恵まれていたんだなって思います。お世話になったプロデューサーに出会っていなければ、望みも叶えられずに今も新卒で入った制作会社にいたことでしょう。自分の願いを叶えられ、自分の思いを表現できる場所にいれて、そのプロデューサーがいなかったら今の自分はいないでしょうね。

 

企画のアイディアはどうやって考えていますか?

僕らが企画会議をする時に大事にしているのが、既存の番組だと“なんでいまそれをやるのか”ということです。理由を答えられないと、企画として旬なものは出せないと思っています。また、新しい番組の時は、絶対盛り上がるから成長させていきたいねっていうのを発掘するのが原点で。自分の見ているもので探すのは限界があるので、いろんな世代の声を聞いたことが企画に繋がっていたりします。

 

番組の制作期間はどれくらいかかるのでしょうか?

3日で撮影から編集までできるものもあれば、1年がかりで取材相手に了承を得て、そこからさらに1年かけて撮影することもあります。ドラマの現場だと、原作者さんの説得、そこから脚本を書き、役者さんの説得、というふうに数年スパンで撮影することもありますよ。

 

ドキュメンタリー番組の良さを教えてください。

取材や制作過程を含めて、取材対象者と信頼を築くことができるので、よりクオリティの高いものができるところだと思います。報道だと、2、3日で関係が終わることも多いのですが、ドキュメンタリーだとかなり長いスパン一緒に過ごすので、取材相手とかなり親密な関係になることができます。

 

仕事をする上で持たれているポリシーはありますか?

自分のやりたいことをブレないようにするということです。すごい人を見ると、どうしても気持ちが違うものに目移りしがちですが、自分の軸や強みを持っている人はブレることがないと思います。僕自身、優柔不断な性格だからこそやりたいことはブレないように意識しています。

 

テレビ業界に向いている人の特徴を教えてください。

積極的にリーダーシップを発揮したり、人をまとめるのが好きな人で、積極的にものごとに取り組める人は向いていると思います。スポーツで言うなら、個人スポーツよりも、人とコミュニケーションを取りながらチームワークを大切にできる人が柔軟に対応できるのかなと思います。あと、体力がある人も向いています。

 

テレビ業界を目指す高校生にメッセージをお願いします。

「テレビはおもしろいんだよ」っていうことを伝えたいです。今の若者がテレビを見なくなっていると言うことは、僕たちがおもしろいものを作れていないということ。逆に高校生たちはどんなものを作るのか知りたいです。YouTubeとか携帯で観るものが主流になってきているので、そういうものとテレビを融合する何かをやってほしい。今のままじゃ右肩下がりなので、若者の力を貸してほしいです。

 

お仕事言葉辞典 番組編

【わらう】 わらう
セットの移動や物をどかしたりする時に使う業界用語。監督やディレクターが、美術さんやADさんに「そこ、わらって」と指示する。初めて現場を経験するADが意味が分からずに笑っている場面は微笑ましい光景のひとつ。

 

お仕事道具見せてください

【インタビュー】番組プロデューサー 小杉康夫「自分の思いを表現できる場所にいれて、僕は本当に出会いに恵まれていたんだな」

取材パス
取材先に事前に申請して取材パスをもらいます。WBCやオリンピックなど、このパスを首から下げて歴史的瞬間の撮影や密着取材を行いました。自宅にはたくさんのパスが溜まっていますが、その全てに強烈な思い出が詰まっているそうです。

 

INFORMATION

小杉さんが務める制作会社 TBSスパークル

【インタビュー】番組プロデューサー 小杉康夫「自分の思いを表現できる場所にいれて、僕は本当に出会いに恵まれていたんだな」

https://www.tbssparkle.co.jp