全国の高校生の活動をお伝えする“全国高校生NEWS”。
第66回は、こどもと大人がゆるやかにつながれるナンバーレスな居場所づくりに取り組む宮崎県立都城商業高等学校の共創ウェルビーイング部を紹介します。
◆誰でも安心して来られる場所を創る『のくにプロジェクト』
宮崎県立都城商業高校の共創ウェルビーイング部では、『のくにプロジェクト』というこどもと大人がゆるやかにつながれるナンバーレスな居場所づくりに取り組んでいます。『のくに』とは、宮崎県にあった遊園地『こどものくに』から。こどもも、大人も、誰が来てもいい自由な場所になるようにという願いを込めて『のくにプロジェクト』と名付けられました。“ナンバーレスな居場所”にこだわるのは、このプロジェクトの発案者・林さん(3年)の実体験でのこと。年の離れた弟妹がいる林さんは、今の小学生と地域の人のつながりが、自分の幼少期と比較すると少なくなっていることに気づいたそうです。地域の人たちと協力して、こどもたちが安心して立ち寄れる居場所を作りたいと思い、この活動を始めました。
誰でも安心して立ち寄れるように参加費は無料。準備時間や費用などたくさんの課題が挙がるなか、イベントを実現するため、地域の約50名を呼んだサミットを開催し、協賛を募りました。そしてサミットの2週間後に第一弾のイベント『積みコップ25段検定』を実施! それから毎月のように、イベントを行っています。その後「のくにプロジェクト」が活動していることが一目でわかるようにシンボルマークを作成しました。徐々にこのシンボルマークが地域に浸透していき、チラシやポスターでマークを見つけて、イベントに足を運んでくれる人が増加。より人とつながりやすくなり、今では、地域の人をつなげる大切な役割を担っています。
イベントを重ねたなかで林さんが最も大変だったと答えたのは、5回目に実施した『ウォールアート』。商店街にある取り壊しが決まった呉服店の壁に、みんなで花をたくさん描いて花束アートにしました。ウォールアートで使用する絵の具は“絵の具バンク”という形で、学校や図書館で使わなくなった絵の具を寄付してもらい、地域の人と協力しながら少しずつ準備を進めたそうです。イベント当日には約200人が来場。会場には、好きな色の絵の具で描くこどもたち、商店街の思い出話をしながら見守る大人たちの姿で溢れました。「完成した壁は今でも鮮明に思い出せるほど、インパクトのある素敵なものになりました。人と人、人と建物、人と街のつながりを実感できたイベントになりました」と林さんは笑顔を見せました。
「地域の課題、社会の課題も高校生が捉えると希望に変わる」と顧問の北郷先生は言います。大人が難しく考えていることも、高校生が主体となるとキラキラと明るい方向へ導いてくれる。「高校生は、こどもと大人の境目。二つの世代をつなぐ、気軽に話せる存在でありたいです」と林さん。“こどもと大人の境目”の高校生たちが作る居場所は、年代問わず地域の人とつながれるナンバーレスな場所として続いていきます。
創立118年を迎える歴史のある高校。“進取敢為”“友愛奉仕”“自律礼譲”の校訓のもと、全国に多くの卒業生を輩出しています。近年では、マーケティングを中心とした専門性の高いビジネス教育とAIを活用した情報教育にも積極的に取り組んでおり、経済社会を生き抜くビジネスパーソンを育成する学校を目指しています。