【インタビュー】介護福祉士 千倉瑞穂「支援をする中で気づいたことを学びにつなげて次の支援に活かす必要がある」

第91回のWorker’s fileは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を行う『ホームケア ひより』にて介護福祉士として働く千倉瑞穂さん。利用者の自宅での介護“訪問介護”を通して、自身の学びも深め続けている千倉さんに迫ります。

介護福祉士 千倉瑞穂「支援をする中で気づいたことを学びにつなげて次の支援に活かす必要がある」

千倉瑞穂(ちくら みずほ)
東京都板橋区にある地域密着型訪問介護事業所『ホームケア ひより』にて、介護福祉士として勤務。またサービス提供責任者として、支援計画の作成などにも従事。「介護福祉士」、「社会福祉士」、「重度訪問介護従事者」、「難病患者等ホームヘルパー」などの資格を保持し、主に難病の利用者に対して介護を行っている。

 

◆支援をする中で気づいたことを学びにつなげて次の支援に活かす必要がある

仕事内容を教えてください。

『ホームケア ひより』という地域密着型訪問介護事業所でヘルパーとして働いており、定期巡回・随時対応型訪問介護看護というサービスをメインに行っています。基本的には1日3回利用者さんの自宅に訪問し、1回につき10分〜30分ほど、それぞれのお体の状態や生活状況に合わせた介護をしています。さらにサービス提供責任者として、利用者さんの支援計画を作ったり、ケアマネジャーさんと相談して訪問時間や支援のサービス内容を調整することも業務の一つになります。

介護福祉士を目指したきっかけを教えてください。

将来の仕事について考えた時に、相手の反応が直接見える仕事、長く需要がある仕事に就きたいと思っていて。そんな時にオープンキャンパスで行った大学で“介護は最も人の生活に深く関わるサービス業の一つ”ということを聞いたんです。そこで介護福祉士という仕事に興味を持ち、福祉系の資格が取れる大学に入学をしました。大学ではデイサービスや特別養護老人ホームなどで実習をしたのですが、利用者さんに触ることはなくコミュニーケーションを取ったりということが中心だったので、技術的な面は実際に介護福祉士として現場に出てから学んでいきましたね。

『ホームケア ひより』に入社されるまでの経緯を教えてください。

『ホームケア ひより』に入所する前も、今と同じ定期巡回・訪問介護、重度訪問介護をする事業所で働いており、看取り期の方や、筋肉が硬くなって動きが悪くなる“拘縮(こうしゅく)”のある方、難病を抱えている方などの支援に入らせていただいていました。仕事をしていく中で、痛みが起きない介助方法があること、さらには固まったままだと思っていた“拘縮”が和らいでいくということを知ることができたんです。そういった学びをもっと深めていきたいと考えていたタイミングで、より医療依存の高い方達への支援ができる事業所としてこの『ホームケア ひより』が起ち上がることになり、入社しました。

訪問介護ではどのような介護を行うのですか?

買い物や掃除、排泄介助、身体の清拭など、利用者さんに合わせた介護を行っています。例えば入浴支援において、ストレッチャーを使用するような方や看護師の見守りのもとでの入浴が必要な方は、訪問介護よりも、訪問入浴という介護保険サービスが適しています。訪問介護では、一人で入れるけれどふらつく不安がある方や、体が動かしづらく髪や体が十分に洗えない方が適しています。ケアマネジャーさんが利用者さんごとに必要なサービスを考えていき、その中で訪問介護として任されている仕事をしていくという形です。

千倉さんが訪問介護を選んだ理由を教えてください。

実習の時に施設も見に行ったのですが、施設の一日の流れに利用者さんが合わせる形になるので、朝ごはんは何時までに食べないといけないとか、ある程度縛りがあるんですよね。もちろんそういう施設が向いている人もいるのですが、私はどちらかというと生活に溶け込める介護がしたくて。利用者さんの生活に合わせた介護ができるという点で、訪問介護の仕事を選びました。

介護福祉士として楽しいと思うところを教えてください。

座学では教わらない知識や技術、ノウハウを先輩から学ぶことができ、その学びがより深くなって、実際に良い支援が行えた時は楽しいです。新しい技術を学んだ時には実際の支援で実践するのが待ち遠しくなりますし、自分自身の支援の選択肢も広がるので、学びが尽きないというところは楽しいですね。

介護福祉士として大変だと思うところを教えてください。

訪問介護は基本的に一人で行うので、自分一人で考えないといけないことが多くて。それが自分の中で合っているのか不安になることもあるので、そこは大変かなと思います。ただ、『ホームケア ひより』では、不安に思った時は後から聞けば教えてもらえるし、本当に不安ならその場で電話して判断を仰ぐこともできるので、そういう点では安心して介護をすることができています。

仕事のやりがいを教えてください。

支援が実を結んで、利用者さんの身体の機能が改善したり、意欲を引き出すことができた時にはやりがいを感じますね。利用者さんの中には「もう寝たままでいい」というような方もいたりするのですが、支援を続けていくと「何かしてみたい」という意欲が出てきたり、徐々にできることが増えていくこともあるので、そういった様子を間近で感じられた時はすごく嬉しいです。あとは体の痛みを感じさせることなく支援をすることができたり、筋肉が硬くなって動きが悪くなる“拘縮”が和らいだりするようなケアができた時に、学んできたことの成果が得られたという達成感を得ることができます。

介護福祉士として心掛けていることを教えてください。

利用者さんに不快な思いをさせないということは一番に考えています。態度や表情、所作や声かけ、言葉の選び方や触れ方など、支援方法に気をつけて、安心感や信頼感を持っていただけるような介護に努めています。例えば触れ方一つをとっても、寝たきりの方だと目が見えない状態でいきなり手を触られることになるので、“これから何をするか”が具体的にわかるように言葉で丁寧に伝える必要があるんです。声かけの時の口調の強弱では印象が全く違うものになりますし、目線も上から見られると威圧感があったりするので、そういった細かいところまで気を配れるように心掛けています。

介護福祉士に向いているのはどんな人ですか?

自分の行動を省みることができる方、あとは向上心がある方は向いていると思います。“その時自分はどう考えてどんな行動をしたのか”とか、“自分の行動は利用者さんを不快にさせていないか”など、支援をする中で気づいたことを学びにつなげて次の支援に活かす必要があるので、そういったことを考えて行動に移せる方はすごく成長できると思います。

介護福祉士という職業の魅力を教えてください。

生活の一部として介護を使っていただけるという点です。利用者さんとは毎日3回顔を合わせるので、家族のような関係になれることもあったりして。看護師さんやケアマネージャーさんには一線を画す話し方をするけれど、ヘルパーにはフランクに話しかけてくださるみたいなこともあったりするんです。家族のような存在として生活の一部に取り入れていただけるというのは、介護福祉士の魅力かなと思います。

介護福祉士としての今後の目標を教えてください。

医療介護ができるヘルパーになりたいと思っています。訪問で医療介護をすることは難しいという風潮があるので、医療的なケアが必要な場合は病院や施設に入るしかないと思ってしまう方が多くて。そういった方々に対しても在宅で介護ができるような事業所にしていきたいです。そのためには、ご利用者さんはもちろん、ご家族の方、支援に携わる方々から信頼されて選んでいただけるようなヘルパーでありたいです。

介護職を目指している高校生にメッセージをお願いします。

しっかりと自分がやりたいことについて考えて、自分がどういう立場で働きたいのかという目標を持ってほしいです。介護福祉士といっても、訪問介護をはじめ、施設での介護、医療ケアなど、さまざまな種類があるので、介護福祉士としての具体案を持ってほしいですね。自分が目指すべき目標をしっかりと持ち、辿っている道が違うと感じたならすぐにシフトチェンジをする。“ここなら自分が成長できる”と思うところを伸ばしていってほしいです。

お仕事言葉辞典 介護福祉士編

【バイタル】 ばいたる
“バイタルサイン=生命のサイン”を略した言葉。呼吸、体温、血圧、脈拍の数値を測定することで、状態の変化や異常を早期に発見することができる。介護・医療には欠かせない言葉の一つ。

 

お仕事道具見せてください

介護福祉士 千倉瑞穂「支援をする中で気づいたことを学びにつなげて次の支援に活かす必要がある」

訪問介護の移動手段・自転車
1日に5軒ほど回る訪問介護の移動手段は自転車。難病の方を受け持つ『ホームケア ひより』では、緊急事態があった際にすぐ駆けつけられるよう、訪問介護の範囲は事業所から自転車で片道10分以内と決めているそうです。

 

INFORMATION

千倉さんが勤める地域密着型訪問介護事業所 『ホームケア ひより』
公式HP:https://kaigohiyori.com