第93回のWorker’s fileは、デジタル駅スタンプアプリ『エキタグ』など、駅やwebで見られる多くのデザインを担当する磯崎雄貴さん。幼い頃から好きだったことを仕事にし、グラフィックデザイナーの現場の第一線で働く磯崎さんに迫ります。
埼玉県出身。東京工科大学デザイン学部卒業後、有限会社デザインオフィスワンエイトに入社。2020年より、株式会社JAMテクノロジーズに所属。株式会社ジェイアール東日本企画が運営するデジタル駅スタンプアプリ『エキタグ』など、数多くのグラフィックデザインを担当している。
◆その時代を彩ったデザインの一つとして、自分の感性がグラフィックで存在し続ける
仕事内容を教えてください。
グラフィックデザイナーとして、チラシやポスターをはじめ、ロゴデザイン、イラスト、映像など目で見えるものを総合的にデザインする仕事をしています。仕事の流れとしては、クライアントさんの「こういうものを作りたい」というイメージをこちらで整理して、ビジュアルを提案していくような形です。最近は、ジェイアール東日本企画が運営する『エキタグ』というアプリや駅構内に貼られているポスターなど、駅や鉄道などに関するデザインに多く携わっています。
現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。
小さい頃からもの作りや絵を描くこと、綺麗なものを見たり集めたりすることが好きだったので、高校生の頃にはデザインや絵に関する学校に進学したいと考えていました。アーティストになりたいわけではなく、将来的な仕事としてデザインを学びたいと考えていたので、専門的なことを学べる東京工科大学のデザイン学部に進学しました。大学ではグラフィックデザインを本格的に学び、サークルでは友達と雑誌やポスターを作ったりしていました。卒業後の就職先について先生に相談した際にデザインオフィスワンエイトという会社を教えてもらい、面接を受けて入社することになりました。デザインオフィスワンエイトでは主に、駅構内に貼られるポスターやチラシ・パンフレットといった印刷物のデザインを行っています。また、2020年からはデジタル分野のプロモーション支援を行う会社である、JAMテクノロジーズにデザイナーとして所属し、webサイトのアイコンや最近ではデジタル駅スタンプ『エキタグ』のデザインなどを担当しています。
働く中でのターニングポイントになった出来事はありますか?
入社して3年くらい経った頃に「ロゴデザインをやってみよう」と言われて、その時に初めてロゴデザインについて力を入れて勉強をしました。それまでは、小さいバナーやチラシを作っていたのですがなかなかうまくいかず、打ち合わせも1人で行ったことがなかったんです。ロゴデザインを勉強して仕事の幅が広がってからは、1人で仕事をするリズムができたと感じています。
アイデアを考える時のルーティンはありますか?
デザインにもトレンドがあるので、それを意識的に調べる時間はしっかりと取るようにしています。僕自身あまり仕事に対してオンオフを設けないタイプなので、出先でもよく周りにあるグラフィックを見ながらデザインを考えたりしています。仕事に関係なくても、常にヒントを探して情報収集するクセをつけています。
デザイナーとして特定のジャンルに関わることで生まれる強みを教えてください。
一貫して仕事を続けることで気づくものがあるなと思っています。最初は“これがいいだろう”と最善を尽くしていても、後々見たら“もっとこうすればよかったな”というのが必ず出てくるんです。そういう発見は次の仕事で活かせるため、回数をこなすことで勉強になることがあるなと感じています。
グラフィックデザイナーの仕事の魅力を教えてください。
デザイナーという仕事に華やかなイメージを持たれている方もいると思うのですが、常に時間と体力との勝負で余裕がない時もあるんです。ですが、自分が作ったものが世に出て、みんなに見てもらえる機会が多いという点はやりがいであり、魅力の一つかなと思います。例えば、チラシやポスター、webやSNSなどで話題になることって、作った本人としては何度経験しても嬉しいんです。そういった声が一番の励みになるんですよね。また、グラフィックデザイナーはトレンドの移り変わりが早い職業ではありますが、webの記事や資料がデザイン本に載ったり、「あの時こんなポスターあったよね」、「あんなアプリあったよね」とたくさんの人の記憶に残っていくという意味では長いものだと思っていて。その時代を彩ったデザインの一つとして、自分のグラフィックが存在し続けるのは、グラフィックデザイナーとしてすごく嬉しい魅力なんじゃないかなと思います。
今後挑戦してみたいことを教えてください。
デザインに関することはたくさんやっていますが、仕事の幅を広げるためにも映像や3Dなどいろいろと学んで、知識を増やしていきたいなと思っています。映像に関することもやってみたいですし、『エキタグ』では3Dも取り扱いしているので、そういったものも自分で作れるようになりたいです。できることを増やすことは、その分仕事もいただけるということだと思うので、頑張りたいと思っています。
クリエイティブな仕事に興味のある高校生にメッセージをお願いします。
クリエイティブな仕事の中でもデザイナーに興味のある人は、“見る”や“作る”ということが好きだと思うので、オンオフ関係なくインプット・アウトプットすることを意識してものを見られるといいと思います。インプットの面では、世の中にはデザインが溢れているので、それを見て刺激を受けて、いろいろなものを吸収してほしいです。例えば、目を引いたものの写真を撮っておくと、後々思い起こすものがあったり、実際に自分のデザインに活用することもできると思うので、まずはいろいろなものに興味を持ってほしいです。アウトプットの面では、“かっこいいな”、“美しいな”と思ったら自分で真似して作ってみたり、それを素材にして新たに何か制作してみるのも楽しいですよ。学生は勉強も大切だと思いますが、自分なりに興味を持ったものをメモや写真で残しておくと、将来役立つヒントがそこに隠れていることもあります。とにかく広くインプットし、さらにそれをアウトプットするようなクセをつけてほしいです。
お仕事言葉辞典 グラフィックデザイナー編
【イキ・トリ】 いき・とり
内容確認時に使用する校正記号。校正時、修正をせずに元のデザインを活かす際には“イキ”、いらない要素を取ってほしい時には“トリ”と書き、デザイナーに修正の指示を出す。
お仕事道具見せてください
MacBook Pro・iPhone・ アクセサリー類
仕事は基本MacBook Pro一台で全て行い、メモやスケジュール管理はiPhoneで行います。また、外出時にアクセサリーを身に付けている磯崎さんにとって、アクセサリーはお守りのような存在だそうです。
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