私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅

復興庁では2024年の9月から、東日本大震災で被害を受けた福島県の被害状況を伝えるため、全国の中高生を対象に出前授業を行ってきました。また同年12月14日(土)・15日(日)の2日間にわたって、出前授業を受講した学生を対象に、実際に福島県浜通りを訪れてより震災への理解を深めるための視察ツアーを実施。今の福島の状況を自分の目で見ることで、今後起こるかもしれない災害への備えの大切さを学ぶ貴重な機会となりました。今回YTJPでは、視察ツアーの様子と高校生たちが実際に訪れて感じた福島の復興について紹介します。

東京電力廃炉資料館

福島県双葉郡富岡町中央三丁目58番地 TEL:0120-502-957
開館時間:9:30〜16:30 休館日:毎月第3日曜日および年末年始 入館料:無料
HP:https://www.tepco.co.jp/fukushima_hq/decommissioning_ac/

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅

最初に訪れたのは『東京電力廃炉資料館』。東京電力の反省から始まる映像に衝撃を受ける高校生たちの姿がありました。映像には、地震発生から津波到達、立て続けに起こる原子炉建屋の水素爆発の様子まで細かく記録。原発事故の記憶と記録を残し、二度と同じような事故を起こさないための反省と教訓を伝える内容でした。館内には、実際に原発内の調査で使用されたロボットや防護服のほか、除染作業に使用された道具などの展示もありました。

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
東京電力が起こしてしまった事故に対して、企業として反省し、再発を防ぎ次に活かそうとする姿が伝わってきました。原発事故を起こさないためにいろいろな仕組みを研究する人がいて、人の努力の凄さを改めて感じました。
私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅当時発電所で対応に当たっていた方々がいかに自分の命をかけて頑張ってくれていたのかを知ることができました。ロボットが災害現場で活躍していて、自分の好きな分野が人や社会の役に立っていることを知れた良い機会となりました。

フタバスーパーゼロミル

福島県双葉郡双葉町中野舘ノ内1-1
営業時間:10:00〜18:00 定休日:月曜日
HP:https://asanen.co.jp/dakishimetefutaba/

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
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岐阜県に本社を置く浅野撚糸株式会社の社長が大学時代を過ごした福島県のために何かできないかと考え、双葉町の復興と発展を担うため2023年4月にオープンした『フタバスーパーゼロミル』。ここでは浅野撚糸が特許を取得した「SUPER ZERO®」という技術を用いた糸の製造を行っています。高校生たちは世界最先端の撚糸技術を見学! 館内に併設されているお土産ショップでは、双葉町で作られた糸を使ったタオルやハンカチなどを、家族や友人へのお土産として購入する姿が見られました。

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
社長が大学生活を過ごした福島に会社を進出させることで、福島の復興に貢献した話がとても興味深かったです。糸を作るためにダンボールごと加熱する過程や、なかなか見ることができない工場内部を見学できてよかったです。
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予算をかけて工場を福島に作る決断をした社長さんがすごいと思いました。アットホームな雰囲気の会社で、双葉町に訪れる人を増やしたり、技術を世界に発信したり、グローバルな目線で仕事に取り組んでいることがわかりました。

東日本大震災・原子力災害伝承館

福島県双葉郡双葉町大字中野字高田39 TEL:0240-23-4402
開館時間:9:00〜17:00(最終入館16:30) 休館日:火曜日(火曜祝日の場合は翌平日)・年末年始(12/29〜1/3)
HP:https://www.fipo.or.jp/lore/

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私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅

東日本大震災による津波と、原発事故の2つの面で被災した福島県の、復興への歩みを学ぶことができる伝承館。館内には地震が発生した時刻で止まった時計や、当時の被害状況を書き留めた模造紙やホワイトボード、泥がついた鍵盤ハーモニカなどが展示されていました。また地震の影響で変形した側溝のふたや揺れにより落下した照明など、多くのものが震災当時のまま残されており、その一つひとつから震災の悲惨さが伝わってきました。実際に原発事故の除染作業で除去された廃棄物が入った袋なども展示。出前授業で除染作業について学んだ学生からは「廃棄物が入った袋が想像より大きくて驚いた」という感想も聞こえました。

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
時計や重りごと流されたポストなど、震災当時のものがそのまま展示してあり、福島の人たちの“後世に伝えよう”という思いが伝わってきました。教科書やテレビでしか見たことがなかったものを実際に見ることができて勉強になりました。
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一瞬にして命を奪う自然の脅威や残酷さを強く感じました。一方で、福島の伝統に関するものも展示してあり、震災で変わってしまったこともあるけれど、人々の想いや伝統は変わらずにこれからも続いていくんだなと前向きな気持ちになりました。

バスで巡る浜通りの今

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2日目はバスからスタート。双葉町・浪江町に詳しいフィールドパートナーの小泉良空さんがバスに同乗し、双葉駅や、帰還困難区域を示すバリケードが残る双葉町鴻草地区、津波の甚大な被害から復興した請戸漁港を車窓から見学しました。また高台に建てられた浪江町営大平山霊園で下車。慰霊碑のある高台を小泉さんは“命の境目”と語り、「当時の請戸小学校の生徒たちは、ここからさらに山を登りより遠くへと避難して助かった」と話しました。そして震災遺構の請戸小学校も見学。時計台は津波が到達した午後4時42分で止まったまま。隆起した体育館、壁ごと流された教室など、津波によって一瞬にして奪われた校舎の様子を目の当たりにしました。

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
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私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
“命の境目”と言っていた高台に実際に立ってみて、たった数メートルで命が奪われてしまうことを実感しました。請戸小学校の生徒はみんな避難することができ無事でしたが、それは奇跡ではなく、避難訓練やいろいろな人の力があった結果だと思いました。

福島県の学生たちと福島について語るワークショップを実施

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2日目には、福島県の学生を交えて「福島の現状を見て、復興に向けて自分は何ができるか考えよう」というテーマでワークショップを実施。7チームに分かれ、県外の学生と福島県の学生それぞれが“福島”の印象を付箋に書き、多くの人に福島県について知ってもらうための意見を出し合い、そのまとめを発表しました。
私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
ツアーに参加した学生が福島に来て感じたことでは「建物がなくて驚いた」と付箋に書いている学生もいました。それを受けて地元の学生からは「県内にいる自分にはこの景色が普通で、そういう点に初めて気づいた」という声が。そして今後福島へ人を呼ぶためにはどうすればいいのかという課題について、ほとんどのチームが“SNSを活用する”と回答しました。「移住を促すためにSNSを活用して今後の福島について知ってもらう」など具体的な活用方法を掲げ、正しい情報を知ってもらう機会を増やし、自分たちも友人や周りの人に伝えていくことが大切だという声が多く挙がりました。
私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅



ワークショップの後は、いわき市にある『ふくしま海洋科学館 アクアマリンふくしま』へ。この水族館は、震災発生からわずか4ヶ月後に営業を再開。市民の思いから作られた水族館が、次は福島県やいわき市の復興のシンボルとなりました。講演では、水族館を再開するために職員全員で前向きに取り組む様子などを学びました。
2日間で多くの方々と交流した学生たち。その多くが、実際に被災地を訪れ、自分の目で見ることの大切さを学んだと話しました。そして、東日本大震災の記憶を風化させないために、自分たちが伝えていくんだと決意を新たに福島県を後にしました。
◆ふくしま海洋科学館 アクアマリンふくしまHP:https://www.aquamarine.or.jp

参加高校生たちが発見した福島の復興の歩み

私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
ニュースで聞くだけではわからないことを自分の目で見て、複合災害の怖さを身にしみて感じることができました。学んだことを風化させず後世に伝えるために、ここで撮影した写真を見せながら今後の対策として活かしてもらえるような活動をしていきたいです。
私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
今回のツアーを通して、福島への印象がガラリと変わりました。原発事故を再発させないための取り組みや、人が住めなくなってしまった街を復興させようと頑張る人がいることを知りました。福島の人の笑顔や温かさに触れ、改めて福島は良い街だなと感じました。
私たちが見た浜通り原発と津波、福島の復興の歩みを学ぶ旅
復興は絆やチームワークの他にも、前向きな気持ちが大事だと感じました。当時の水族館の館長さんがとても前向きに復興に取り組んだことを知り、ポジティブな気持ちは周囲の人に伝染することがわかりました。私も前向きな気持ちで明るさを伝染させていきたいです。

復興庁『福島の今』ツアーレポートはこちら
▶︎https://www.fukko-pr.reconstruction.go.jp/2018/fukushimanoima/shiru/demae2024/tour.html