第99回のWorker’s fileは、佐賀県鹿島市にある観光土産品卸問屋・有限会社東津商店の営業担当、中村信隆さん。佐賀の特産品を活用したお土産品を開発するなど、地域を盛り上げるために奮闘する中村さんに迫ります。
佐賀県鹿島市出身。佐賀県立鹿島実業高等学校(現・佐賀県立鹿島高等学校)商業科卒業。高校卒業後は名古屋にある観光土産関係の会社に入社。20歳の時に佐賀県にUターンし、家業の手伝いや運送業、清掃会社、ふるさと納税業務など鹿島市でさまざまな仕事を経験。昨年8月に有限会社東津商店に入社し、営業を担当。その他、特産品を利用した商品開発にも携わっている。
地域に貢献していきたい
💬仕事内容を教えてください。
私の働いている東津商店は、お土産品の卸売業を行っている会社です。現在佐賀県のお土産品のほかにも全国各地のお土産品を70〜80品ほど取り扱っています。私の仕事は主に売店や道の駅、サービスエリア、空港などに商品を置かせてほしいと営業に行くことです。店員さんとやりとりをしながら信頼関係を築くことも大切だと考えているため、商品の売り込みだけではなく、配達にも行っていますね。お土産品のターゲット層や、ウチの商品がどれくらい売れているか、そのお店での人気商品は何かなどのリサーチのためにも、取引先の方とのコミュニケーションはとても大事にしています。
💬現在の仕事に就くまでの経緯を教えてください。
今の仕事に就くまで、正直数えきれないくらいいろいろな仕事をしてきました。高校卒業後は名古屋の観光土産品の卸売の会社に就職したのですが、荷解きも終わっていない1週間後に静岡県にある営業所へ異動になったんです。というのも実は、今の東津商店の代表も私が入社した会社の元社員で、代表が辞めることになったので私が引き継ぎとして静岡に行くことになりました。その時に代表から東津商店の話を聞いていて、興味を持ったのを覚えています。その後、その会社を20歳の時に辞めて佐賀に戻ってきました。それからは家の仕事を手伝ったり、大手運送会社で働いたり、いろいろな仕事を経験して、昨年の7月まではふるさと納税の仕事をやっていました。その仕事で自治体や商品開発に携わる機会が増えたこともあり、改めて新卒で入社した観光土産品の仕事を魅力的に感じるようになったんです。そこで代表に連絡を取って、面接をしていただき、入社することになりました。
💬仕事として自治体に深く関わりたいと思った経緯を教えてください。
もともと数年前から“地域を盛り上げたい”という思いがふつふつと湧き上がってはきていて。私たち民間の企業でも地元に貢献できることはないかなという気持ちはありながらもなかなか実行できずにいました。それでも地域には関わっていたくて、清掃会社やふるさと納税に関わる仕事をしていました。そんな中、2022年に鹿島市に隣接する嬉野市と、その隣の武雄市に西九州新幹線が開通したんです。その影響なのか、鹿島市の電車が減便になり、観光客が減ってしまって。そういう状況を見て、これを打開できるのは自治体だけなのかと改めて思ってしまったんです。ただ、大袈裟な言い方にはなってしまいますが、そんな中でも“民間で革命みたいなものを起こして、鹿島をもっと盛り上げていきたい”という思いは根底にあります。
💬地域に関わる仕事の魅力を教えてください。
自分が生まれてから今まで関わってきた場所やもの、人に還元できるところです。昨年、東津商店として初めて高校生と共同で『佐賀いちごさんバウム』という佐賀県のブランドイチゴを使ったお土産品を開発しました。共同開発した佐賀県立鹿島高校とは別に、数年前まで鹿島実業高校という学校があったのですが、合併するくらい学生が減ってしまって。私たちは『佐賀いちごさんバウム』を通して、今の鹿島高校を盛り上げたいという思いだったのですが、販売実習のときには、鹿島実業高校の卒業生の方もたくさん応援してくれたんです。今では、『佐賀いちごさんバウム』自体の認知度も高く、一度は口にしたことがあるという声も多くいただくくらい、人気の商品になっています。鹿島は“地元を応援したい”という想いが強い地域なので、鹿島をPRすることで地域全体が盛り上がるのは嬉しいですね。
💬前職の経験で活かされていることはありますか?
いろいろな経験をさせてもらったので、その時々のノウハウやインプットの仕方は、今の仕事でも活かされていると思います。特にふるさと納税に関わる仕事では、地域の事業者さんやふるさと納税で商品を出したい会社さんを盛り上げる立場だったので、そういう経験は今も活かされていますね。
💬仕事のやりがいを教えてください。
地元を盛り上げる商品を開発して、その商品が目に見えて売れている時に“地元に貢献しているな”とやりがいを感じます。例えば、農産物を使って商品を開発すると、その農産物自体が盛り上がるんです。そうすると、その農産物を作っている農家さんも喜ぶんですよね。商品が売れれば、農産物そのものの価値とブランドが高まります。商品を通して、自治体や農家さん、さらには市や県へ貢献できるのは、喜びを感じますし、嬉しさでもあります。
💬仕事をする上で持たれているポリシーを教えてください。
私の人生のテーマとして考えているのが“きっかけ作り”なんです。みんな何かしらのきっかけがあって何かを好きになったり、何かに取り組みたいと思うはずなので、何をするにもきっかけはとても大事だと思っています。私の手で誰かのきっかけになるようなことをやったり、誰かが言ったことを自分が体験して発信したりと、誰かにとってのきっかけになりたいという想いは大事にしています。
💬今後、鹿島市をどのように盛り上げていきたいですか?
私自身“地域を盛り上げる”という意味で、この仕事を倒れるまでやりたいという気持ちでやっています。私の場合は商品を通して鹿島市を盛り上げて、地域に貢献していきたいという想いがやはりとても強くて。地域のために頑張って商品をPRして、農家さんや漁師さん、高校生などいろいろな人が幸せになったらいいですよね。そして、全国各地の方が鹿島市で誕生したお土産を手に取り、鹿島の魅力に気づいて、「ぜひ鹿島に行ってみたい」と思ってもらえるような町にしていきたいです。


アクリル見本
販促品のアクリル見本。箱の中身を自分の目で確かめることができないお土産品にとって、お客様に商品の中身を理解してもらうために使うアクリル見本は欠かせないものだそうです。

製品を受注・発注する際の数量のこと。ロット数は、会社や製品、保有している設備によって異なる。「最低ロット500個」の場合は、500個から注文できるということになる。
●公式HP:https://higasitu.com
