6月24日に、舞台『アナザー・カントリー』が東京・よみうり大手町ホールにて開幕した。
初日を前に、報道陣に向けゲネプロが公開され、さらにゲネプロ終演後には、主演の和田優希(Jr.SP/ジャニーズJr.)と共演の鈴木大河(IMPACTors/ジャニーズJr.)、おかやまはじめ、そして上演台本・演出の鈴木勝秀が稽古での手応えやゲネプロ終演後の気持ち、そして本番にかける思いを語った。
青春の葛藤を豪速球で。役者そのもので魅せる
小道具は本一冊、それにセットもさまざまなものに見立てられるスツールと扉を表すエントランスくらいで、とことんシンプルを極めた舞台だ。舞台上には一段高くなった四角い台があり、その台をキャストが回すことで場や時間の経過を表す。映像も一切なし。その分、役者の力を丸のまま見せつける舞台となった。まさに演劇の醍醐味と言えるだろう。
物語は1930年代、イギリスの歴史あるパプリックスクール(男子校)の寮ガスコイン・ハウスが舞台。学生たちは良家の子息ばかりで、厳しい規律のもと、未来のエリートを目指して暮らしている。ところが一人の寮生が自殺、それを機に各自の思惑や葛藤が露わになっていく…。学生たちそれぞれの思想の齟齬、寮内の権力争い、思春期の性、同性愛の自覚などが生々しい会話のやりとりで綴られる。物語が進むにつれ、恋を楽しむ者、反対の思想に傾倒する者、寮生の自殺を自分の責任だと思い悩む者、表裏がありずる賢い者、偉くなろうと画策する者などなど、まるで群像劇のようにキャラクター一人一人が浮かび上がるのが印象的だ。
主人公のガイ・ベネットは明るく自由奔放。規則に縛られず、他寮の学生に恋するなど、はみ出した存在ではあるが、一方で将来は外交官を目指し、学生ヒエラルキーのトップである“トゥエンティートゥー”になりたがっているという、現実的な側面もある。ある意味、今時の若者を一番象徴するような人物ではないか。そんなベネットが自分自身を問い、また傷ついていくさまを、和田優希はみずみずしく、鮮やかに演じている。そしてベネットの親友であるトミー・ジャッド役を鈴木大河は斜に構えながらも実直で嘘のない男として表した。二人とも(ジャニーズ事務所の公演ではない)外部舞台が初めてと思えない存在感だ。他の学生たちも個性が際立ち、また唯一の大人役であるおかやまはじめがスパイスとなり、芝居を引き締めた。イギリスの愛国歌「我は汝に誓う、我が祖国よ」が物語と重なり、耳に残る。
寮生活はいわば社会生活も同じだろう。私たちは体制に身を委ねるのか、自分で変えるのか、それとも新たな地を探すのか。劇中には描かれていないが、ベネットのモデルが実在したロシアのスパイであるガイ・バージェスであることを知ると、人生の深淵を垣間見た思いがした。
◆囲み会見コメント
和田優希(Jr.SP/ジャニーズJr.)
「ゲネが終わってホッとしています。ジャッドは明るい役で、ひたすらやりたいことをやっています。僕と性格が似ている部分もありやりやすさもある反面、僕はこれをやりたいと外に表すのは奥手なところもあって。その分、ベネットになりたいという憧れもあります。まず全力で楽しもうと、またベネットならどうするかを考えながら演じました。最後まで全力で頑張るのでぜひお楽しみいただきたいです」
鈴木大河(IMPACTors/ジャニーズJr.)
「セットはシンプルで衣裳替えもほぼなし。ましてストレートプレイが初めて。今回は同年代の俳優さんも多く、このシーンはどうする?と話し合いながらやってきました。彼らのおかげでここまでこられたと思います。ジャッドの台詞は難しい単語が多くて、自分でも初めての言葉ばかり。普段の喋り方も回りくどくなるくらい練習しました。最後まで全力でやり切りたいです」
おかやまはじめ
「喋る役なので、自分のスピードに口がついていくかどうかの真剣勝負でした。みんな稽古場でよく話し合って作っていて、ああ、いい現場だなぁと思いました」
演出・鈴木勝秀
「演出のテーマは“さらけ出す”。最初はセットや小道具などもっとあり、レーニン像も用意しましたが、稽古をしながらどんどんなくしていきました。とにかく、見るものはこの若者たちだけ!甘やかさず、逃げられないようにして(笑)、とにかく顔を上げて前を向いて、脱いでもいいくらいに全員がさらけ出す。お二人(和田・鈴木)は主役、準主役としてしっかり全力で引っ張ってくれました。変化球はいらない、剛速球でいってくれと言って、実際に剛速球しか投げない作品になりました」
(文:三浦真紀/撮影:新井裕加)